先日、HYPERICE社の振動機能付きフォームローラーVYPERの改良品「VYPER 2.0」が発売されたとのことで調べてみると、どうやら最近になってHYPERICEの研究チームがVYPERに関する研究を発表したそうで、プレスリリースが掲載されていました。

振動機能付きのフォームローラーに関しては、ずっと気になっていたので、これを機に一度試してみようと思います。(VYPERおよびHYPERSPHEREは1週間レンタルサービス(有料)があります。)

そこで、この記事ではVYPERに関する研究についてのプレスリリース英語原文と、VYPERとHYPERSPHEREのレンタルについて紹介します。

HYPERICE研究チームによる、VYPERに関する報告

まず、プレスリリースに関する内容で、日本語の製品ページに載っていたのは以下の文章です。

VYPERでしか体験できない振動効果

NASM-PESの考案者であるマイク・クラーク博士率いるHYPERICE社のスポーツ医科学チームと、スポーツ医科学分野で著名なダーリン・パドア教授率いるノースカロライナ大学チャペルヒル校のチームとで共同研究を2015年10月から行ってきて、2017年5月に発表できた最新の研究結果では、VYPERの振動効果によって身体の全体的な動作範囲を最大40%向上させる科学的根拠のあるデータが得られました(プレスリリース英語原文)

HYPERICE-VYPER製品ページ

次に、プレスリリースの英語原文です。

英語原文の要約

HYPERICE社は,フォームローリングに振動を併せることで関節可動域と痛みに対して,良い影響をもたらすことを証明した

リカバリーと動作向上テクノロジーを牽引するHYPERICEは、今日フォームローリングに振動を加えることで、最大で40%関節可動域が増加することを報告する。Darin Padua博士とMichael Clark博士およびノースカロライナ大学の研究者から成るHYPERICE研究チームは、HYPERICEのVYPERを使った研究を2015年10月から続け、最近になり結果を得ることができた。

この研究では、振動を伴わない標準的なフォームローラーとVYPERとの違いを検証することを目的とし、活動的な成人20名を被験者にして実験を行った。筋膜トリガーポイントはfasciaの痛みや動作制限の原因となりうる。フォームローリングおよびバイブレーションは、筋膜トリガーポイントに伴う痛みや動作制限を改善するのに効果的である。

フォームローリングとバイブレーションを組み合わせることによって、単独で使用した場合よりも、大きな効果が得られる可能性がある。そのため、本研究は上記2つのアプローチを組み合わせた場合の足関節背屈可動域と痛みに対する効果を検証することを目的とした。

VYPERのバイブレーションはsetting 2(32Hz)に設定した。

結果は、VYPER条件(フォームローリング+振動)の方が、フォームローリング単独条件よりも、有意に大きな可動域の拡大を得ることができた。さらに、VYPER条件の被験者は、トリガーポイントの筋膜リリースに伴って痛みの軽減を報告した。

HYPERICE創設者のAnthony Katz氏は「この研究は、VYPERがアスリートやフィットネス愛好家に与える複数の利益を示しているだけでなく、この振幅の振動が身体に強力なインパクトを与えることを証明している。これらの知見は、振動と圧迫のコンビネーションによって、軟部組織の状態を改善し、関節可動域を増加させることが可能であることを示しており、パフォーマンスの改善や回復促進を望むアスリートや、健康の維持・増進を望む全ての人にとって大切なことである。」と述べている。

HYPERICE社は、リカバリーと動作向上テクノロジーに関する研究を更に進歩させるため、今後1年かけて、振動のほかに叩打と熱技術の効果に焦点を当てた3つの新しい研究をスタートさせる予定である。

個人的感想

まず、英語のプレスリリースでは一貫して「VYPER」と書かれてありましたが、実験で使用されたのは新型の「VYPER 2.0」のようです。本文中「バイブレーションはsetting 2(32Hz)に設定した。」という部分から、推測できます(旧型VYPERのsetting 2は29Hz、新型VYPERのsetting 2は32Hz)。

プレスリリースの英語原文には、「FULL STUDYが必要な場合は、専用フォームからメールアドレスを登録してください」という案内があるので、登録しました。登録は完了したものの24時間経過しても、研究の全文は送られてこないので、“全文を入手することはできない”という前提で、ここから先は話を進めたいと思います。もし今後、全文が送られてきたら、それに応じて内容を訂正したいと思います。

購読を登録したもののレスポンスは無し

以下、いくつか個人的に疑問に思った部分についてのコメントです。

「VYPER > 他社」の主張をするためには,研究デザインが適切ではない

「他社の振動機能付きフォームローラーよりも、うちのVYPERが優れている」と主張したいのなら、振動機能無しのフォームローラーとVYPERを比較するという研究デザインでは不十分です。今回の研究デザインだと、“関節可動域の向上と痛みの軽減という点において”、あくまでも “振動無し” より “振動有り” の方が効果が高い(VYPERじゃないとダメ、とは判断できない)、というのが適切な解釈です。

VYPERの振動の特徴

製品ページには、他社製品は「ただ速く回転するだけの振動」であり、「皮膚の表面にだけ働きかけるので筋肉組織に効果がない」と書いてありますが、「効果がない」と言い切れる根拠は示されていません。

研究員の方たちも、この研究デザインでは物足りないことを絶対に理解しているはずです。それにも関わらず、今回の研究デザインで結果を出したということは、振動機能無しフォームローラー vs. 他社製の振動機能付きフォームローラー vs. VYPERの3群設定で実験を行ったものの、他社製振動機能付きフォームローラーとVYPERの間には有意差が出なかったので、最初から2群比較(振動機能無しvs. VYPER)だったということにして発表にしたのではないかと考えることもできます。

振幅に関して、「今回の実験で行った振幅の振動は、関節可動域の増加に効果的であった」というのは正しいですが、「VYPERが生み出す振幅の振動でなければダメ」という証明にはなりません。

実際に、局所的な振動アプローチが関節可動域に与える影響について調べた先行研究では、VYPERとは全く異なる器具を使って振動を与えていますが、関節可動域に対してポジティブな効果が得られたと報告されています1

局所的な振動に関する先行研究

研究論文の「方法」に当たる記述が,ほぼ皆無

プレスリリースなので、論文のように詳細に記載する必要はないと思いますが、「単発での実施の効果を検証した実験か、長期的に継続したときの効果を検証した実験か」や「どの部位にどのくらいの時間、介入を行ったのか」ということくらいは説明が欲しいと思いました。

どこで発表された?

それから、「2017年5月に発表できた最新の研究結果」とのことですが、これはどこかの学術誌に掲載されたということでしょうか?それとも、学会で発表しただけでしょうか。「2015年10月から研究を行ってきた」とありますから、まさか“自社調べ”程度とは思えません。

“最大” 40%?

「身体の全体的な動作範囲を最大40%向上」とありますが、プレスリリースでは「足関節背屈可動域への効果を検証することを目的とした」と書いてあります。「身体の全体的な動作範囲」というのは、どこから出てきたのでしょうか。

それから、”最大”40%ということは、20人の被験者のうち誰か1人でも大幅な改善を示せば、そのような記述が可能です。つまり、1人(もしくは数人)は大幅な改善が得られたけれども、残りはイマイチだった可能性もあるという解釈もできます。

「科学的根拠のあるデータ」と言うのなら、せめて平均値と標準偏差を示してもらいたいところです。

用途次第か

プレスリリースに関しては、色々と疑問点があったのでネガティブな物言いになってしまいましたが、個人的には、自分自身が使用することを前提に、リラクゼーションを目的とするのであれば良い製品かなと思っています。

心地よく感じて、身体が軽くなった“感じ”というのは、あくまでも主観的な要素なので、その人がポジティブな効果を感じられるなら、それでOKだと思います。

これが、パフォーマンスの回復促進とかケガ予防といった話になってくると(実際、公式HPではそれらを謳っていますが…)、「良い感じがする」というだけで他人に勧めるのは無責任なことになってしまうので、「本当に効果あるの?」を客観的に考えていかなくてはならないと思います。

正直、他社製品でも同様の効果は感じられるはずなのに、他社製品では「効果がない」というような現時点では根拠のない主張をするよりも、他社製品より故障しづらいとか、バッテリー寿命が長いとか、保証が手厚いとか、そっちの方面を他社よりも充実させてもらって、そこをアピールされる方が好感が持てます…。

国内で流通している振動機能付きフォームローラーは「HYPERICEのVYPER」と「DOCTOR AIRのSTRETCH ROLL」だと思います。とりあえず、現時点で得られる情報をみる限りでは、どちらが優れているかを判断することは難しく、どちらを選択するかは個々の使用感に委ねられると言えそうです。

VYPERとHYPERSPHEREを1週間お試しレンタル

VYPERもHYPERSPHEREも、一般の消費者にとっては決して安い製品では無いと思います(VYPER2.0:36,000円・HYPERSPHERE:28,000円)。そのため、公式サイトでレンタルサービス(有料)が提供されています。やはり、使ってみてからでないと、なかなか購入は決断しにくいので、これは嬉しいサービスです。

VYPERとHYPERSPHEREのレンタル(「インナーケア」とか「体のバランスを正常な状態に保つ」とか、気になる記述は多々ありますが、一般消費者に訴求するためには、ビジネス的にこういう記述をせざるを得ないのだろうと判断して、読み流すことにします。)

レンタル内容にバリエーションがある

3,240円 or 3,780円(レンタル内容により異なる)でツールをレンタルできます。送料は、会社側が負担してくれるそうです。

  • VYPER(レギュラー)+防音・防振マット:3,240円
  • VYPER(ハード)+防音・防振マット:3,240円
  • VYPER(レギュラー&ハード)+防音・防振マット:3,780円
  • HYPERSPHERE+防音・防振マット:3,240円
  • VYPER(レギュラー)+HYPERSPHERE+防音・防振マット:3,780円

ちなみに現時点で、VYPERのレンタルは旧型のようです。

RAPTOR|ラプター

また、今回調べるまで知りませんでしたが、マッサージツールとして「RAPTOR」というものもありました。*こちらはレンタルできません。

ラプター

価格が55万円なので、家庭向けではなく、施設やチーム向けと思われます。使用しているところを山本俊樹選手がインスタにアップしています。が、コメント欄で、ダルビッシュ投手が「自分のは壊れました(笑)」と報告しているのが、恐ろしいです。一般人なら、55万円の器具が壊れたら…、笑えないです。やはり、この手の製品は故障が怖いです。

ラプターを使用する山本俊樹選手

今回はプレスリリースに関して主に紹介しました。VYPERを否定したいわけでもなく、逆に応援したいわけでもありません。ただ純粋に、疑問に思った点についてまとめただけです。

それでは、レンタル品が到着して数日間使ってみてから、また使用感を報告したいと思います。
→使用感のレビュー記事アップしました(7/30)

VYPERとHYPERSPHEREの使用感レビュー|ドクターエアのストレッチロールとの違いは?

2017.07.30

参考文献

  1. Sands, W. A. et al. The effect of vibration on active and passive range of motion in elite female synchronized swimmers. Eur. J. Sport Sci. 8, 217–223 (2008).

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