【論文紹介】ウォームアップで行う振動付きフォームローラーは柔軟性や筋力にどのような影響を与えるか?

バイブレーションフォームローラー

Comparison of vibration rolling, nonvibration rolling, and static stretching as a warm-up exercise on flexibility, joint proprioception, muscle strength, and balance in young adults

Chia-Lun Lee, I-Hua Chu, Bo-Jhang Lyu, Wen-Dien Chang & Nai-Jen Chang
J Sports Sci. 2018 Apr 26:1-8. doi: 10.1080/02640414.2018.1469848. [Epub ahead of print]

研究目的

近年の研究において、振動機能付きフォームローラーは長座体前屈やカウンタームーブメントジャンプのパフォーマンスを増加させることが報告されている。

しかし、振動付きフォームローラーと振動無しフォームローラー、それから静的ストレッチングが柔軟性、関節固有感覚、パフォーマンスに与える影響を比較した研究は見当たらない。

そこで、本研究はウォームアップ中に行う振動付きフォームローラーと振動無しフォームローラー、静的ストレッチングが直後のパフォーマンスに与える影響を調査することを目的とした。

方法

30名の男子大学生(年齢20.4 ± 1.2歳)が以下の流れで実験に参加した。

振動機能付きフォームローラーの効果を調べるための実験フローチャート

なお、3つの条件の実施順はランダムに割り当てられ、各条件の間は48時間の間隔をあけた。

今回、使用したフォームローラーはHyperice社のVyperで、振動付き条件は28Hzで実施した。振動有り条件・無し条件共に、ターゲットとなる部位をフォームローラーに乗せ、40bpmのテンポで前後に動かした。片脚ずつ行い30秒×3セット行った。

結果

結果は以下のとおり。

屈曲ROM

伸展ROM

 

屈曲筋力

伸展筋力

 

固有感覚

Yバランステスト

膝関節伸展筋力の変化量において、振動付きフォームローラーと静的ストレッチングとの間に統計学的有意な差が認められた。

考察

本研究は初めて、ウォームアップに行う振動機能付きフォームローラーが、柔軟性・関節固有感覚・筋力・動的バランスに与える影響を調査したものである。

結果は、振動付きフォームローラーは、膝関節の伸展および屈曲ROM、筋力を増加させ、動的バランスにも良い影響を与えた。なお、固有感覚への悪影響はなかった。

本研究のリミテーションとしては、今回は28Hzの振動数を採用したため、その他の振動数では結果が異なる可能性もある。

結論

振動付きフォームローラーは固有感覚を阻害することなく、ROM・筋力・動的バランスを改善させた。

また、静的ストレッチングよりも、膝関節伸展筋力と動的バランスを有意に改善した。

そのため我々は、振動付きフォームローラーをウォームアッププログラムの中に組み込むことを推奨する。

個人的感想

振動無しのフォームローリングを用いた先行研究では、直後の筋力低下を引き起こさずにROMを増加させるという報告が複数あります。

今回、振動有りのフォームローラーの場合も同様の結果が得られました(指標によっては振動無しよりも有りの方が効果的)。

今回の結果や先行研究を考慮すると、「関節可動域を増加させてからトレーニング・競技練習に入りたい」というニーズがあるとき、「柔軟性を高める=静的ストレッチング」と単純に考えるのではなく、複数の選択肢を並べて検討すべきであり、その中にフォームローリング(ツールが揃っているのであれば振動機能付きフォームローリング)も含まれてくると言えます。

フォームローリング フォームローリング(筋膜リリース)に期待できる効果と期待できない効果