ストレッチングの実施が筋肥大に関与しているかどうかを検討したレビュー論文が新たに発表されました。
興味深いテーマですのでチェックしておきたいと思います。
※ 以下の論文内容は抜粋したものですので、興味のある方はフルテキストを読まれることをおすすめします。
João Pedro Nunes, Brad J. Schoenfeld, Masatoshi Nakamura, Alex S. Ribeiro, Paolo M. Cunha, Edilson S. Cyrino.
本研究の目的は、ヒトを実験対象にした場合において、ストレッチングが筋肥大に貢献するかどうかを検討することであった。
10件の研究が含まれた。各研究結果は以下のとおり。
10件の研究が今回のレビューの条件に該当し、そのうち3件が筋の成長に対してポジティブな結果を報告していた。
このことは、ストレッチングが筋肥大に好影響を与える可能性を示してはいるが、実際のところストレッチングの実施方法が結果を左右すると考えられる。
結果一覧の表からも分かるとおり、トータルの伸張時間が唯一の決定因子ではないと考えられ、ストレッチングの種類や強度といった要素が筋肥大促進に大きな役割を果たすようである。
ポジティブな結果を報告している3つの研究(Freitas and Mil-Homens 2015, Simpson et al. 2017, Mizuno 2019)は、いずれも何らかの外的な負荷を加えてストレッチングを実施していた。
そのことを考慮すると、ストレッチングの強度は、ストレッチングによる筋肥大を引き出すために重要な要素のひとつであることが推察される。
このトピックに関する追加の情報を得るため、ストレッチングがレジスタンストレーニングと組み合わせて実施された場合に、どのような影響をもたらすかを検討しておく。
一覧からも分かるとおり、このトピックに関しても研究間で矛盾した結果が報告されているため、現時点では確度の高い結論を導くことは難しい。
そのことを承知の上で得られる示唆としては、筋肥大が生じたことを報告した研究は、ストレッチングをレジスタンストレーニングのセット間休憩に実施しており、筋肥大効果が認められなかった研究は、レジスタンストレーニングの直前、もしくは別のタイミングでストレッチングを実施していたということである。
このことから、ストレッチングとレジスタンストレーニングを組み合わせて実施する場合、その実施タイミングが結果に影響を与える要素のひとつであることが推察される。
通常のスタティックストレッチングは、筋ボリュームや筋構造に対して好影響を与えないと考えられる。
一方で、負荷をかけた強度の高いストレッチングや、筋トレのセット間にストレッチングをおこなうような場合は、筋肥大につながる可能性もある。
しかし、これらのことについて調査した研究の数が少ないため、現時点ではこのトピックに関して確かな結論を導くことはできない。
ストレッチングの筋肥大効果について検討したレビュー論文でした。
ストレッチング単独実施が筋肥大をもたらすかどうかを調査した研究と、ストレッチング+レジスタンストレーニングの組み合わせが筋肥大に与える影響を調査した研究の2パターンが検討されていました。
パーソナルトレーナーの立場としては、ストレッチングとレジスタンストレーニングを組み合わせた条件の方が、より気になるテーマですので、そちらについて私見を述べたいと思います。
Evangelista et al.2019の論文が発表されたあと、論文レビューサービスのMASSとThe S&C Research Reviewが、この論文を紹介していましたが、両者の解釈のトーンは異なっていました。
MASSはセット間にスタティックストレッチングを行うことに対して、「スーパーセットやサーキットを行わない限りは、セット間に”なにか”をする必要がある。セット間の休憩時間に軽いストレッチングを行うことは非常に実行可能な選択と思われる。」と好意的な態度を示しています(もちろん、さらなる調査が必要であることは併記してあります)。
一方のThe S&C Research Reviewは、やや慎重な態度を示し、取り入れることに対する助言などはありませんでした。
このように、専門家の間でも「ストレッチング+レジスタンストレーニングの組み合わせが筋肥大に与える影響」のトピックに関して、解釈が分かれている状態であることを承知しておく必要がありそうです。
今回のレビューでは、セット間におこなうとポジティブな影響が期待できるかもしれないということでしたが、このことが「=実際の筋トレにおいてもセット間レストにストレッチングを採用すべき」という判断にダイレクトに繋がるわけではないことに注意が必要です。
理由は「セット間レストにおこなうことの候補は他にもあるから」です。
Evangelista et al.2019の報告で示唆されたのは、あくまでも「(対象者にトレーニング経験がない場合)セット間レストに、何もしないよりかはストレッチングをした方が、筋肥大に対していいかもしれない」ということです。
そのため、【セット間レストを他のことをして過ごす条件】と【ストレッチング条件】を比較しなければ、ストレッチングの優位性を確かめることはできません。
また、被験者がトレーニング経験がなかったという点も考慮する必要があります。
そのため、仮にセット間休憩にストレッチングを採用する場合であっても、常に他の可能性も検討しながら取り組むのがよいと思います。
今回のレビューでこのトピックに関しては、まだまだ分からないことばかりということが分かりました。
今後はトレーニング経験のある被験者を対象にした続報が出るのを期待したいと思います。