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【論文紹介】腰痛患者に対する重みを利用した静的ストレッチの効果

腰痛

Effects of a static stretch using a load on low back pain patients with shortened tensor fascia lata

Hae-In Bae , Dae-Young Kim, Yun-Hee Sung
Journal of Exercise Rehabilitation 2017;13(2):227-231

背景

腰痛は多くの人が、人生で一度は経験すると言われている。腰痛の原因は、はっきりとは明らかにされていないが、骨格筋損傷による腰椎アライメントの変化や、周囲の組織の力学的要素の変化が腰痛の主な原因であると考えられている。

加えて、脊柱の安定化を担っている脊柱周囲の筋群や、脊柱の自然な湾曲を維持するための腰部や股関節周囲の筋群が腰痛に関わっているとされている1。

大腿筋膜張筋は股関節の屈曲・外転・内旋と膝関節の伸展・外旋の機能を持つ。 Gottschalk ら(1989)によると、大腿筋膜張筋の短縮による股関節内旋は骨盤の回旋を誘発する。また、過剰な股関節の内旋は腰椎や股関節の不良アライメントの原因となり、腰痛の発生につながりうることが報告されている2-4。

そのため、股関節の関節可動域を改善し、腰痛を緩和するために大腿筋膜張筋のストレッチが処方されるべきである。近年の研究では、慢性的な腰痛患者は中殿筋前部線維と大腿筋膜張筋の弱化と緊張を有することが確認されており、該当筋群の緊張緩和と強化を行うことで痛みが軽減されたと報告されている5。

静的ストレッチは通常の可動域を超えて動かすことはしないため、数あるストレッチの手法の中で、安全かつ効果的な方法であると言える。

とくに、重みを利用した静的ストレッチは筋腱の伸張に大きな効果があることが知られている6-8。

しかし、ストレッチのポジティブな影響を報告した研究の多くは、健康な被験者を対象にしている。そこで、本研究は大腿筋膜張筋の短縮を有する腰痛患者を対象にして、重みを利用した静的ストレッチが、痛みと柔軟性と腰痛による障害指数に与える影響を調査することを目的とした。

方法

Ober Testで陽性と判定された腰痛患者23名が被験者であった。

被験者特性

被験者は以下のグループのいずれかにランダムに振り分けられた。

コントロール群:立位にて両手を頭の上に置き、ストレッチする脚を内転内旋方向に動かし、ストレッチする脚とは反対方向に体幹部を側屈させるストレッチを行った。

実験群:仰向けで上半身は固定し、ストレッチする脚を股関節内転内旋位にしてベッドの下に落とし、脚自体の重みを利用してストレッチした。

ストレッチの実施時間は、各群とも両足で15分(50秒×6回を2週間毎日)。

日常生活動作における不自由さはOswestry Disability Indexを使用した。

Oswestry Disability Index(ODI)は腰痛疾患に対する疾患特異的評価法で、Activites of Daily Living(ADL:日常生活動作)の障害度を評価するものです。平たく言えば、腰痛が日常生活にどれだけ影響を与えているかを数値化する評価法です。

ODIについては 特別企画●『腰痛研究のエビデンス・評価と臨床的展望』 Oswestry Disability Index ─日本語版について─(PDF)を参照ください。

結果

痛み

痛みの評価にはVASを使用した。両群とも痛みは統計学的有意に減少していた。2群間に有意な差は認められなかった(下図 Table2)。

日常生活の障害度

ODIは両群ともに改善していた。なお、2群間に有意な差は無かった(下図 Table3)。

実験結果

柔軟性

2群間に有意な差が認められた。

立位体前屈結果

考察

本研究において、大腿筋膜張筋のストレッチは腰痛患者の痛みを緩和し、日常生活動作の改善に役立った。これらの効果は、ストレッチを行い、筋緊張緩和の結果、毛細血管の拡張に伴い組織への血流供給が増加し、代謝産物の減少および十分な酸素供給が生じたことで、痛みの緩和に繋がったことによると考えられる9,10。

結論として、重みを利用した大腿筋膜張筋の静的ストレッチは腰痛を緩和し、柔軟性を改善し、日常動作における障害の改善に効果があった。そのため、大腿筋膜張筋の短縮が見られる腰痛患者においては、重みを利用した静的ストレッチは、重みを利用しない静的ストレッチよりも有用な方法であると考える。

しかし、本研究は一般化するには被験者数が不十分であるし、ストレッチが骨盤や腰部に与えた影響を三次元的に分析していないというリミテーションがある。

個人的感想

まず、実際にどのような形でストレッチを行ったのか、写真を載せておいてほしいところでしたが、本文中に含まれていなかったのが残念です。

次に、内容とは関係無い部分では、柔軟性の測定がMETHODSでは「Stand and reach test」と書かれてあるのに、RESULTSでは「sit and reach test」と書かれてあったり、スペルミスも見られました。

それから考察部分も、あまりしっくりきませんでした。コントロール群は立位体前屈の改善が無かったにも関わらず、VASとODIは改善している点について言及してほしかったです。

VASとODIに関しては2群間の差が認められなかったのに、重みを利用した静的ストレッチの方が効果的であった、と結論づけられるのはなぜでしょうか。

そもそも、大腿筋膜張筋に対するストレッチの効果を立位体前屈で評価するのは適切なのでしょうか?

また、本研究で実施したコントロール群のストレッチ方法が、確実に大腿筋膜張筋を伸張させられていた、と証明する根拠はあるのでしょうか?コントロール群のストレッチ方法が適切に伸張できていたという前提が成立しなければ、「重みを利用しない“静的ストレッチ”条件」とみなすことも不適切ということになり、「重みを利用した静的ストレッチ」vs.「重みを利用しない静的ストレッチ」という構図も成立しないことになります。

さらに、被験者はOber Testで陽性でしたが、2週間の介入によって改善したのでしょうか?考察がいまいちしっくりこなかったのは、このような疑問のためです。このテーマに関する先行研究を豊富に把握しているわけではないので、もしかしたら私が「この領域では当たり前のこと」を分かっていなくて、それも原因のひとつとしてあるかもしれません。

腰痛に関する情報を求めて、この記事にアクセスしていただいた方は、AthleteBody.jpにて良い記事がありますので、そちらを参照ください。

参考文献

  1. Kim K, Kim EK, Lee DG. Effects of PNF patterns exercise on pain, functional disability and fear avoidance belief in chronic low back pain
    patients. J Korean Soc Phys Ther 2014;26:110-116.
  2. Gottschalk F, Kourosh S, Leveau B. The functional anatomy of tensor fasciae latae and gluteus medius and minimus. J Anat 1989;166:179-189.
  3. Kim BK, Son JH. The effect of tensor fasciealatae length on the rotation of pelvic during one leg stance. Korean J Orthop Man Ther 2009;15:63-
    68.
  4. Schamberger W, Samorodin FT, Webster C. The malalignment syndrome: implications for medicine and sport. Edinburgh: Churchill Living-
    stone; 2002.
  5. Lee SW, Kim SY, Yang JM, Park SD. Comparison of difference of the gluteus medius muscle fiber thickness during maximum muscle contraction between chronic low back pain with gluteus medius weakness
    and healthy subject. J Kor Soc Phys Med 2015;10:71-82.
  6. Kim AR, Kwon JH, Lee HS. The effect of static stretching loading on hamstring flexibility in healty individuals. Korean J Sports Sci 2015;24:
    1341-1348.
  7. Peck E, Chomko G, Gaz DV, Farrell AM. The effects of stretching on performance. Curr Sports Med Rep 2014;13:179-185.
  8. Shrier I, McHugh M. Does static stretching reduce maximal muscle performance? A review. Clin J Sport Med 2012;22:450-451.
  9. Park JS, Lee KI, Lee CG. The effectiveness of selected stretching exercise by surface EMG on back pain patients. Korean J Sport Biomech
    2005;15:139-146.
  10. West AD, Cooke MB, LaBounty PM, Byars AG, Greenwood M. Effects of G-trainer, cycle ergometry, and stretching on physiological and psychological recovery from endurance exercise. J Strength Cond Res
    2014;28:3453-3461.