【セミナー情報】2019年1月12日 NSCA関西ADセミナー「現場で役に立つパートナーストレッチ(実技)」

【論文紹介】筋トレとダイナミックストレッチングの組み合わせが筋力と柔軟性に与える影響

Influence of strength and flexibility training, combined or isolated, on strength and flexibility gains.

Leite T, de Souza Teixeira A, Saavedra F, Leite RD, Rhea MR, Simão R.
J Strength Cond Res. 2015 Apr;29(4):1083-8. doi: 10.1519/JSC.0000000000000719.

目的:ダイナミックストレッチングが筋力と柔軟性の獲得に与える影響を調査

筋力トレーニングとダイナミックストレッチングの異なる実施順の組み合わせが、筋力や柔軟性の獲得に与える影響を長期的に調べた研究は見当たらない。また、これまでの研究は座位中心の被験者をリクルートしたものが多い。そこで本研究は、トレーニング習慣のある女性を対象として、12週間の筋トレ+ダイナミックストレッチング or それぞれ単独実施が筋力と柔軟性に与える影響を調査することを目的とした。

方法

最低でも36ヶ月は筋トレとストレッチを行っている女性28名(46±6.52歳、56.8±5.02kg)が被験者であった。
実施する内容によって、以下の4群が設定された。

  • 筋トレのみ:ST
  • 筋トレ→ダイナミックストレッチング:ST+FLEX
  • ダイナミックストレッチング→筋トレ:FLEX+ST
  • ダイナミックストレッチングのみ:FLEX

12週間の実験で、セッションは1日おきに実施され、合計48回のセッションが行われた。負荷は以下のとおり。

図15
レジスタンストレーニングの実施種目は、レッグプレス、レッグカール、レッグエクステンション、ベンチプレス、フロントラットプルダウン、シーテッドショルダープレス、バイセプスカール、トライセプスプーリーの8種目。セット間レストは1分間とした。
ダイナミックストレッチングは、上肢、下肢、肩、股関節、体幹部を含むプログラムで構成され、それぞれの部位あたり30回×3セット、合計で60分のセッションであった。ダイナミックストレッチングの実施可動域は、わずかに痛みを感じる範囲とした。

結果:筋トレは柔軟性を低下させない

図中のSTはStrength;筋トレ FLEXはFlexibility;ダイナミックストレッチングを表します。
図16ベンチプレスの記録は、FLEX以外の3グループで有意に増加。

図17レッグプレスは、すべてのグループで有意に増加。

つぎに、12週間のトレーニング and/or ダイナミックストレッチングの結果、柔軟性(今回の実験では、長座体前屈)がどのように変化したかの結果。
図18長座体前屈のスコアは、すべてのグループにおいて統計学的有意な変化はみられなかった。

考察

  • 筋トレは柔軟性に悪影響を与えない。
  • ダイナミックストレッチングだけでも下肢筋力の向上は期待できるかもしれないが、その向上の程度は筋トレのそれには及ばない。
  • 筋トレとダイナミックストレッチングの実施順は、筋力および柔軟性の獲得に影響を与えない。
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個人的感想

今回の実験では12週間筋トレだけをしていても柔軟性が変化しなかったということになります。ここから言えることは、筋トレは柔軟性に対してネガティブな影響を与えないということです。

と、言い切ってしまえれば簡単なのですが、今回の柔軟性の指標が長座体前屈であることを考えると、言い切るには少し情報が不足している気もします。

長座体前屈は、自分の意思で股関節を屈曲させていく能動的な測定なので、股関節屈筋群や腹筋群の筋力も関わってくることになります。つまり、ハムストリングスや腰部の、いわゆる“柔らかさ”だけで測定値が決まってくるわけではないということです。だとすると、仮に筋トレによって身体の後面の筋の伸張性が低下していたとしても、前面の筋力が向上していれば、後面の伸張性低下を相殺することができ、結果的に測定値が変化しなかった、ということも可能性としては考えられます。

あるいは、ストレッチトレランスの影響もあり得ます。
ただし今回の研究で、そのようなことが起こっていたかは、それを明らかにするような測定項目がないので「わからない」としか答えようがありません。

それから、ダイナミックストレッチングを継続的に行ったにも関わらず、「いずれの群においても長座体前屈のスコアが向上しなかった」というのは、そもそもダイナミックストレッチングが適切に実施できていなかったのではないか?という疑問もあります。これに関するもうひとつの解釈としては、今回の被験者が日頃からトレーニングを行っている被験者であったという点に着目して、すでにトレーニング習慣のある人がダイナミックストレッチングをしても柔軟性改善の効果は得られない、という見方もできます。これも、実際はどういう理由でこの結果になったのかは推測の域をでません。
あくまでも、そういう可能性も考えられる、というだけです。

明確なのは、

  • 筋トレ→ダイナミックストレッチング、あるいはダイナミックストレッチング→筋トレという実施順に関しては、結果に大した影響を与えなかった
  • 筋トレだけをしたグループが最も筋力向上が大きかった(エフェクトサイズが大きかった)

という点です。
この研究を参考にすれば、筋力向上を最優先の目的にしている人はダイナミックストレッチングを同一セッション内で行わず、筋トレのみに専念した方がよい、ということになります。ただし、実験ではダイナミックストレッチングは60分間行われているので、そのあたりは現場とのギャップがありますし、有意な差が出ているわけでもないので解釈に注意する必要はあります。

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