Acute effects of unilateral static stretching on handgrip strength of the stretched and non-stretched limb
Jacob D. Jelmini, Andrew Cornwell, Nazareth Khodiguian, Jennifer Thayer, And John Araujo
European Journal of Applied Physiology, pp 1–10
目的
先行研究では、静的ストレッチング後に生じる筋力等へのネガティブな影響が多く報告されているが、片側だけに対して静的ストレッチングを行ったときの、ストレッチングを行っていない反対側への影響を調査すること。
また、RFDに対する影響も検討した。RFDは神経筋への影響を反映する指標として有用であると考えられている。
方法
被験者は男性15名(27±10歳)、女性15名(25±6歳)であった。
実験の流れは以下のとおり。
静的ストレッチングは、前腕部の屈筋群を対象に、45秒の伸張を3回実施した。
結果
握力はストレッチ側のSS1分後の測定時に有意に低下していた。そのほかの条件においては、有意な変化はみられなかった。
一方で、RFDはストレッチ側・非ストレッチ側に関わらず有意に低下していた。また、その低下はSS15分後の測定においても持続していた。
結論
先行研究と同様に、本研究においても静的ストレッチング直後の筋力低下がみられた。加えて、静的ストレッチング直後は、RFDも低下することが示され、その影響はストレッチ側だけではなく、非ストレッチ側へも確認された。
このことは、静的ストレッチング後のパフォーマンス低下に、神経要因が関わっていることを示す根拠となる。
また、静的ストレッチングのネガティブな影響は、最大筋力よりもRFDに対してより大きい可能性も示された。つまり、爆発的なパワー発揮を必要とするスプリントやジャンプに対しての影響が大きいということである。
個人的感想
この結果が出たことにより、静的ストレッチングの実施直後に筋力低下が生じていなくても、RFDにはネガティブな影響がある可能性が示されたことになります。
つまり、この研究結果を尊重すれば、「短い実施時間なら静的ストレッチング後、筋力低下が生じなかったから大丈夫」だけでは議論が不十分ということであり、RFDまで加味して議論する必要が出てくるかもしれないということです。
また、興味深いことに、静的ストレッチング1分後に生じたストレッチ側の筋力低下は、15分後の測定時にはベースラインまで回復していましたが、RFDは15分後も有意に低下(-19%)したままでした。
これは、この件においてRFDという指標が、筋力よりもセンシティブな指標である可能性を示しています。
著者らによれば、静的ストレッチングがRFDに与える影響を調査したのは、この研究が初めてとのことです。今後は、さらに複雑な議論が必要になるかもしれません。
今回の研究は、前腕を対象にしていたというリミテーションはあるので、今後ほかの部位の調査が報告されるのを待ちたいと思います。