「あぐらがかけない」を改善するための股関節ストレッチ

あぐらがかけない理由と改善するためのストレッチ

日本の生活スタイルが洋式化したとは言え、飲食店で座敷の場合など、あぐらをしなければならないシーンには度々遭遇します。

しかし、パーソナルトレーナーとして活動していると、クライアントから「あぐらがかけない」「しんどい」という声を聞くことがあります。そこで今回は、『体力科学*』に掲載された日本語論文**をヒントに、あぐらがしんどい時の対策について簡潔にまとめることにします。

*体力科学:一般社団法人 日本体力医学会が発行する学術誌

**浦辺 幸夫, 篠原 博, 竹内 拓哉, 堤 省吾(2017)「あぐら座位(胡座)時の脊椎矢状面アライメントの変化」 体力科学. vol: 66 (5) pp: 363-367

あぐらで腰が痛くなる理由

あぐらをかくと骨盤が後傾になりやすい

長時間あぐらをかいていると腰が痛くなることがあります。これには、骨盤と腰椎の動きが関わっています。

股関節の柔軟性が低いと、あぐらをかいたときに骨盤が過度に後ろに倒れてしまい、それに伴って腰部が丸くなります(=腰椎の後彎)。腰椎の後彎が強い姿勢は腰部への負担が高くなると考えられており、これが長時間あぐらをかいたときに腰が痛くなる原因のひとつとなります。

あぐらがしんどい時の対処法

あぐらがしんどい時、とりあえずその場ですぐにできる対処としては、お尻の下に折り曲げた座布団を差し込むという方法です。

今回の研究では、あぐらの座面高を1cmずつ上昇させていったときの、腰椎角の変化が測定されています。(上昇させるのは座面のみです。足は床に置いているままなので、相対的に骨盤の位置が上昇するということです。)

その結果、12cm以上座面を上昇させた場合に、統計学的有意に腰椎角の減少が認められました。つまり、お尻の位置を12㎝以上高くしたときに腰部の丸まりが軽減されたということです。

補高量によって、腰椎角が変化する

なお、この研究の被験者は健康な成人男性(年齢26.2±6.8歳、身長171.0±3.6㎝、体重64.3±6.3㎏、BMI22.0±1.6㎏/㎡)ですので、他の特徴を持つ人の場合は、必要な補高量が変わってくる可能性は大いにあります

根本的に改善して,あぐらが楽にできるようにするには

座布団を下に差し込む方法は、あくまでも一時的な対処法であり、根本的な問題解決とはなりません。では、補高無しでも、あぐらが楽にできるようになるためには、どうすればよいのでしょうか。

この研究では、股関節周りの柔軟性があぐら時の腰椎の動きに与える影響についても検討されており、統計の結果、股関節屈曲・外転・外旋可動域の制限が、あぐらをかいた時の骨盤後傾に影響を与えていることが示唆されています(r = 0.47~0.53の中程度の相関関係)。

あくまでも、相関関係を示したものなので、因果関係は明らかではありませんが、ストレッチ等を行って股関節屈曲・外転・外旋の可動域を広げておくことは、あぐらをしやすくなる手助けとなるかもしれません

以下に、参考動画を貼っておきます。

股関節屈曲可動域を高めるストレッチ

股関節外転・外旋可動域を高めるストレッチ

参考になる書籍は、しっかりした内容を求めるならこちら

見やすさ重視で、写真多めを求めるならこちら

まとめ

  • 股関節周りの柔軟性が低いと、あぐらをかいたときに骨盤が後ろに過度に倒れ、腰が丸くなる(腰椎後彎) 腰部への負担が高まり、痛みが発生する原因となる
  • あぐらがつらい時の短期的な対応策:折り曲げた座布団やクッションをお尻の下に敷くことで、足に対してお尻の位置を相対的に高くする
  • あぐらがつらいのを根本的に改善するための方法:ストレッチ等で股関節周り(特に股関節屈曲・外転・外旋可動域)を柔らかくする