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わかりやすい説明をするために必要なのは「削ること」

プレゼンの基本

パーソナルトレーナーとしてクライアントへ何らかの説明を行うとき、それはある種のプレゼンテーションと捉えることができます。

「なぜ、このエクササイズをする必要があるのか」「なぜ、そのフォームで行うべきなのか」「それをすることで、結果的にどのような利益があるのか」等を納得してもらえるように“プレゼン”しなくてはいけません。

そして、納得してもらうためには、わかりやすく伝えることが重要なのは言うまでもありません。

そこで、今回は「世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられているプレゼンの基本」の内容をきっかけに、「わかりやすい」と感じてもらえる伝え方について、考えていきます。

脳が「わかりやすい」と感じる話し方に必要なのは「コア・メッセージを把握すること」

本書が伝えたい中心的なメッセージは「プレゼンは”簡潔さ”が大切である(p.26)」ということです。

聞き手の脳が短時間で処理できる情報量を考え、聞き手の好みを推測して、できる限り簡潔にできれば、「わかりやすい」プレゼンになることは間違いありません。(p.27)」とあるように、「簡潔さ」ということはわかりやすい説明の最重要事項と位置付けられています。

そして、プレゼン(説明)が簡潔にまとまらない根本的な原因は「自分が一番伝えたい「コア・メッセージ」が何なのかをプレゼンする本人がわかっていない(p.22)」ことだと指摘されています。

つまり、仮に運動指導の現場において、自分の説明が理解してもらえなかった場合、おそらくその説明は簡潔にまとまったものになっておらず、さらに簡潔にまとめられない原因は、自分自身がそれについての核心を理解できていないということにあると考えられます。

例えば、エクササイズのフォームについて説明したときに、クライアントにスムーズに理解してもらえないとき、それはおそらく自分の中でも「なぜ、その方にとって、その動作パターンで行うことが適切なのか」「それによってどのようなメリットが得られ、どのようなリスクを避けることができるのか」などの本質的な部分を十分に理解できていないことの表れだと捉えることができます。

共通項は「削ること」

コア・メッセージを把握したら、つぎに必要なのは、「聞き手の脳が短時間で処理できる情報量を考え、できる限り簡潔に」することです。伝え方やプレゼンに関する書籍等を見渡すと、ひとつの共通項を見出すことができます。それが「削ること」です。

いくつか紹介します。

資料を作成するときに、何もないコンピュータの画面に要素を一つ加えるごとに、相手に理解するための負荷(認知的負荷、Cognitive Load)を与えることになります。要素を加えたぶん、受け手に頭を使わせることになるのです。(中略)人が情報を受け取るときには、いつでもこの認知的負荷がかかります。(中略)人間の脳の処理能力には限界があります。(中略)余計な認知的負荷は、相手の頭の処理能力を使わせるだけで、情報を理解するうえでは何の役にも立ちません。このような負荷は取りのぞいたほうがいいのです。(中略)この認知的負荷を、最小限(でも、情報が十分に伝わる程度)に抑えることを考えるようにしましょう。

コール・ヌッスバウマー・ナフリック『Google流 資料作成術』ー第3章 不必要な要素を取りのぞく

 

シンプルにするというのは、不要なものを削り、必要なものの言葉が聞こえるようにすることである。

画家 ハンス・ホフマン

 

ツメタイ言い方ですが、ダイジでないならどうでもいいのです。

三谷宏治『一瞬で大切なことを伝える技術

 

まわりくどい言い方をされると、言葉の絡まりの中から意味を探し出さなければなりません。

スティーブン E. ルーカス『アメリカの大学生が学んでいる「伝え方」の教科書』

このように、わかりやすく伝えるために必要なのは、魔法のフレーズを考えることよりも、大事なことだけを抽出し、余計な情報を削る作業だということがわかります。

不要な説明が多いと、大切な内容を見つけ出すのが大変。しかし、余計な認知的負荷を取り除くことで、伝えたいことが分かりやすくなる。

単純化するという複雑な仕事

削るというのは、すなわち単純化するということです。

ものごとを複雑にするのは単純な仕事だが、
ものごとを単純にするのは複雑な仕事である。

ポール・J・マイヤー

このように語ったのはアメリカの教育家ポール・J・マイヤーです。

運動指導の現場でも、実は単純に説明できるはずなのに、回りくどい表現や余計な情報を付け加えすぎて、複雑な説明になってしまっているのを見かけることがあります。

ものごとを複雑に話すことで“専門家のように振る舞う”ことは単純な仕事ですが、専門職が真に請け負うべき仕事は、後者の、ものごとを単純にするという複雑な仕事の方であるということは疑う余地がありません(もちろん、本質的な部分は損なわないように配慮しながら)。

“シンプルさ”を求めて

わかりやすく伝えられない原因はどこにあるのか、「コア・メッセージを自分でも理解できていないことが原因なのか」「単に、削る作業というプロセスに目が向いていなかっただけなのか」、まずは原因を追究し、前者であれば改めて知識を深める必要があるでしょうし、後者であれば大事なことだけを抽出し、余計なことを話さない訓練をしていくということになるかと思います。

気をつけなくてはならないのは、「相手の反応が悪いと感じると、ヒトはどんどん発言を重ねます。しかも、同じような文章を、ちょっとだけ言い直してみたりします。たとえ話や事例を挙げるなら、まだいいのかもしれません。でも、似たような文章を重ねられても、相手は混乱するばかり(三谷宏治『一瞬で大切なことを伝える技術』)」ということです。

そして、簡潔に述べることが重要であることを理解していても、「ほとんどの人は、聞くより話をするほうが好き(東山紘久『プロカウンセラーの聞く技術』)であるため、油断すると話のボリュームが増えがちです。今回の書籍をきっかけに、定期的に“シンプルさ”への回帰を心掛ける必要があると改めて感じました。

言葉にできるは武器になる
「言葉にできない」ことは、「考えていない」のと同じである