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【論文紹介】高齢者に対する筋力トレーニングの有効性:システマティックレビュー

高齢者

Resistance training for activity limitations in older adults with skeletal muscle function deficits: a systematic review

Evan V Papa, Xiaoyang Dong, Mahdi Hassan
Clin Interv Aging. 2017; 12: 955–961.
Published online 2017 Jun 13. doi:  10.2147/CIA.S104674

背 景

今後、世界的に見て高齢者の数は大幅に増えることが予想され1、アメリカにおいては65歳以上の数は、2030年までに約2倍以上の7100万人に達するとも言われている2

高齢者は自発的な活動量が減少することにより、筋力の低下は加速する3。高齢者が運動機能を維持するためには適切な筋力が必要である。そのため、近年では高齢者の筋力低下については益々重要な研究テーマとなっている。

高齢者の筋力低下の主な要因の一つは、加齢に伴う筋量の減少である。これはサルコペニアとして知られている4,5。1989年に、IrwinRosenberg博士は、年齢と関連する筋肉量の 低下を「サルコペニア」(ギリシャ語で筋肉を意味する 「sarx」と喪失を意味する「penia」) と提案した6。それ以来、サルコペニアは加齢に伴って生じる骨格筋量と骨格筋力の低下として定義されている。

骨格筋の機能障害がエクササイズの実施によって治療可能であることは、確固たる科学的根拠が存在する7。とりわけ、筋力トレーニングは高齢者の筋力を高める安全かつ効果的な方法である8,9

しかし、最近の報告によると、身体的障害や健康関連QOLの改善は筋力トレーニングでは対処しきれない可能性が示されている10。また、このトピックに関する最も広範なレビューは、古い報告か11、筋力とパワーのみの変化に焦点を当てた研究であり12、機能的移動能力について調査した報告はほとんどない。

そのため、本レビューの目的は、骨格筋機能低下を有する高齢者に対する筋力トレーニングの効果に関する情報を、近年の文献に基づいてアップデートすることと、筋力トレーニングに取り組む高齢者に使用することができる実践的なガイドラインを提供することを目的とした。

方 法

この目的を達成するためには、比較的新しい研究を採用する必要があるため、我々は2008年5月1日~2016年11月までに国際誌に発表された英語論文のみを採用することにした。定められた検索基準にしたがって、論文を検索した結果、PubMed、SPORTDiscus、CINAHL、PEDro、AgeLineから合計366件の文献が見つかった。そこから、除外基準に照らし合わせた結果、最終的に11件の報告が本レビューの対象となった。

11件の報告に含まれた被験者は、すべて健康な地域在住高齢者であった。平均年齢は71.7歳(mean range 61.1–91.3歳)で、男性被験者のみの研究が1件、女性被験者のみの研究が3件、残りの7件の報告は両方の性別を含んでいた。
11件の研究の介入内容等については以下の表を参照。

先行研究一覧

結果と考察

筋肉量は50歳を過ぎてから、毎年約2%減少すると言われている13。また、同様に50歳から10年ごとに約15%筋力が低下すると報告されている14。筋力トレーニングを行うことでそれらを抑制するためには、高齢者は週2~3回の実施頻度が推奨されている15。筋力トレーニングは、筋力向上以外にも多くのメリットをもたらす。

このシステマティックレビューの目的は2008年5月以降に発表された論文に基づき、機能的移動能力に対する筋力トレーニングの効果を検証することであった。結果として、バランス・機能的移動能力・転倒防止の改善を示す以前の報告を裏付けることとなった。Lustosaら16とGranacherら17はTimed Up and Go(TUG)テストの改善を報告し、Nicholsonらは歩行速度と静的バランスの改善を報告した18。Perschらは歩行速度、クリアランス、ケイデンスの加齢による変化を改善することに効果的であると報告した19

これらの結果は、筋力トレーニングが高齢者の日常生活の動作改善に対して基礎的な役割を果たすことを証明している。しかし、実質的な健康関連QOLへの効果についてはさらなる研究が必要である。

高齢者に対する筋力トレーニングは一般的に推奨されるものであるにも関わらず、移動性改善のための筋力トレーニングのプログラム処方に関する決定的なゴールドスタンダードは存在しない。

しかし、Smithらは5年に及ぶ縦断的研究によって、高齢者が身体活動量を維持することの重要性を強調した20。その縦断的研究では、高齢者に2年間筋力トレーニングを行ってもらい、筋力を有意に向上させた後、トレーニングを中止したときの変化を検証した。トレーニングを中止してから3年後(全体としては5年の実験期間ということになる)に再度、測定を行ったところ、2年間のトレーニングを完了した時点よりかは、筋力は低下していた。

しかし、興味深いことに3年間もディトレーニング期間があったにも関わらず、ベースラインよりも15.6%も筋力が高いという結果であった。
したがって、2年間トレーニングをしたという経験は、何もしないよりも明らかに良いと言える。現場の指導者は、高齢者が身体活動量を維持することは、加齢に伴う骨格筋量の減少を抑制するのに役立つと自信を持って推奨するべきである

まとめ

高齢者は筋力トレーニングを行うことで、筋力の向上以外にも多様なメリットを享受することができる。いくつかの先行研究において、バランス、機能的移動能力の改善、転倒予防の効果が実証されている。筋力トレーニングは、加齢による筋機能の低減を抑制し、歩行や階段昇降などの日常動作を改善することができる。我々の研究は、90歳以上の高齢者でさえも機能的なパフォーマンスの改善を達成できることを示している。

そのような多くのメリットがあるにも関わらず、高齢者は推奨される1日の身体活動量を確保することが容易ではない。この場合、現場の指導者は、高齢者ができないことに代えて、何ができるのかということに焦点を当てるべきである。とにかく、高齢者が活動的になるように励ますことが最優先である。

個人的感想

2015年のNSCAのカンファレンスでBrent Alvar博士による「高齢者に対するレジスタンストレーニング:エビデンスに基づくアプローチ」という講演を拝聴しましたが、そのときに「まずは無理せずに各種目1セットからでいい」「負荷は自体重か、非常に軽いウェイトから」「継続して行うことが大事で、それから負荷を漸増させていけばいい」といったことを強調されていました。今回の報告と重なる部分が非常に多いと思います。

NSCAカンファレンス資料

高齢のクライアントから「ここ(フィットネスクラブ)に来るだけで、トレーニングになる」という言葉が聞かれることもありますが、まさしくその通りで、身体活動量を維持するということに着目すれば、フィットネスクラブや治療院に足を運んでもらうこと自体がプラスになると言えます。

今回のシステマティックレビューを読んで、あらためて高齢者指導における筋力トレーニングの有効性と、活動的な時間を維持することの大切さを確認することができました。

参考文献

  1. 1. Moore I. Geriatrics is a wide open field. [Accessed July 29, 2016]. Available from: http://www.americangeriatrics.org/health_care_professionals/profiles_in_geriatrics/irene_moore
  2. Centers for Disease Control and Prevention General Information about the Older Adult Population. 2015. [Accessed May 11, 2017]. Available from: http://www.cdc.gov/aging/emergency/general.htm.
  3. Centers for Disease Control and Prevention General Information about the Older Adult Population. 2015. [Accessed May 11, 2017]. Available from: http://www.cdc.gov/aging/emergency/general.htm.
  4. Newman AB, Haggerty CL, Goodpaster B, et al. Health Aging and Body Composition Research Group Strength and muscle quality in a well-functioning cohort of older adults: the health, aging and body composition study. J Am Geriatr Soc. 2003;51(3):323–330.
  5. Doherty TJ. Invited review: aging and sarcopenia. J Appl Physiol. 2003;95(4):1717–1727.
  6. Rosenberg IH. Sarcopenia: origins and clinical relevance. J Nutr. 1997;127(5 Suppl):990S–991S.
  7. American College of Sports Medicine. Chodzko-Zajko WJ, Proctor DN, et al. American College of Sports Medicine position stand. Exercise and physical activity for older adults. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(7):1510–1530.
  8. Reeves ND, Narici MV, Maganaris CN. Effect of resistance training on skeletal muscle-specific force in elderly humans. J Appl Physiol. 2004;96(3):885–892.
  9. Vincent KR, Braith RW, Feldman RA, et al. Resistance exercise and physical performance in adults aged 60 to 83. J Am Geriatr Soc. 2002;50(6):1100–1107.
  10. Latham N, Anderson C, Bennett D, Stretton C. Progressive resistance strength training for physical disability in older people. Cochrane Database Syst Rev. 2003;(2):CD002759.
  11. Higgins J, Green S, Scholten R. Chapter 3: maintaining reviews: updates, amendments and feedback. Cochrane handbook for systematic reviews of interventions, version 5.1.0. 2011.
  12. Peterson MD, Rhea MR, Sen A, Gordon PM. Resistance exercise for muscular strength in older adults: a meta-analysis. Ageing Res Rev. 2010;9(3):226–237.
  13. Quittan M. Aspects of physical medicine and rehabilitation in the treatment of deconditioned patients in the acute care setting: the role of skeletal muscle. Wien Med Wochenschr. 2016;166(1–2):28–38.
  14. Larsson L. Histochemical characteristics of human skeletal muscle during aging. Acta Physiol Scand. 1983;117(3):469–471.
  15. Ferguson B. ACSM’s guidelines for exercise testing and prescription 9th ed. 2014. J Can Chiropr Assoc. 2014;58(3):328.
  16. Lustosa LP, Silva JP, Coelho FM, Pereira DS, Parentoni AN, Pereira LS. Impact of resistance exercise program on functional capacity and muscular strength of knee extensor in pre-frail community-dwelling older women: a randomized crossover trial. Rev Bras Fisioter. 2011;15(4):318–324.
  17. Granacher U, Lacroix A, Muehlbauer T, Roettger K, Gollhofer A. Effects of core instability strength training on trunk muscle strength, spinal mobility, dynamic balance and functional mobility in older adults. Gerontology. 2013;59(2):105–113.
  18. Nicholson VP, McKean MR, Burkett BJ. Low-load high-repetition resistance training improves strength and gait speed in middle-aged and older adults. J Sci Med Sport. 2015;18(5):596–600.
  19. Persch LN, Ugrinowitsch C, Pereira G, Rodacki AL. Strength training improves fall-related gait kinematics in the elderly: a randomized controlled trial. Clin Biomech (Bristol, Avon) 2009;24(10):819–825.
  20. Smith K, Winegard K, Hicks AL, McCartney N. Two years of resistance training in older men and women: the effects of three years of detraining on the retention of dynamic strength. Can J Appl Physiol. 2003;28(3):462–474.