科学論文にも“誇張”の波

最近はキュレーションサイトが増えてきて、色々なコラムを目にする機会が多くなりました。それらはクリックしてもらわないことには始まらないので、タイトルは煽情的なものが多いです。読者を引きつけたいがために、どう考えても大げさに記述されているであろうものも見られます。タイトルだけならまだしも、本文も主観や偏った解釈によって記述されていることが多く見られ、読者のリテラシーが試される状況となっています。

今回BMJに掲載された報告によると、誇張の傾向は科学論文にも波及していると言います。

Use of positive and negative words in scientific PubMed abstracts between 1974 and 2014: retrospective analysis

Christiaan H VinkersJoeri K TijdinkWillem M Otte
BMJ
2015; 351 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.h6467

こちらの研究は、1974~2014年にPubmedに掲載された科学論文の要約のうち、ポジティブ/ネガティブワードがどれくらい使用されているかを調査したものです。

ポジティブ/ネガティブワードとは、robust(確かな)、novel(今までにない)、innovative(革新的な)やineffective(効果的でない)、irrelevant(不適切な)などです。

主要な結果だけを抜き出すと、ネガティブワードの使用頻度は…

NEGATIVEグラフ

微増でした。

一方、ポジティブワードの使用頻度は…

POSITIVEグラフ

40年間で、約9倍に増加していました。どうやら、表現の自由度が増しているのは、科学論文も例外ではないようです。

ただし、インパクトファクターの高いジャーナルに限って分析すると、誇張するワードの増加傾向は少し緩やかだったそうです。

この結果を受けて、著者らは「実験結果の明るい側面に着眼しやすい傾向がある。しかし、その解釈が適切に事実(=実験結果)を表しているかは疑わしい。」としています。

この論文へのレスポンスとして、「これは単に語句の使用頻度を調べたにすぎない」というコメントもあるようですが、主観的な表現が増加しているのは事実なのですから、読み手にも注意が必要ということは間違いありません。

科学論文の“盲信” を避けるためには?

1つの論文に囚われてしまわないための対策としては以下が挙げられます。

①常に批判的に読むことを忘れない
②同じ分野の論文を複数参照する
③レビュー論文があれば読んでみる
④ジャーナルのインパクトファクターも気にしてみる
⑤反対の結果を報告している研究を探して、その論文のDiscussionで、どのように論じられているか読んでみる

個人的には、特に⑤が大切だと思っています。自分が主張したいことに対して、どのように反論される可能性があるのか、また、それに対して論理的に回答することができるか、ということを考えるのは重要なプロセスです。

論文やコラムに限らず、アウトプットされた情報のすべては、その人の主観・思想などが加えられている場合がほとんどです(仮に情報提供者が、それを意図していなくても、です)。なので、違う出処の情報に接するというのが大切だと思います。

そして、このブログもまた然りです…。

参考文献
Vinkers, C. H., Tijdink, J. K. & Otte, W. M. Use of positive and negative words in scientific PubMed abstracts between 1974 and 2014: retrospective analysis. BMJ 351, h6467 (2015)

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