情報が氾濫している現代において、情報リテラシーの重要性が語られて久しいですが、批判的な視点が必要なのはネットの情報に触れるときだけではありません。今回は本に載っている情報の信頼性について考えたいと思います。

デタラメな情報が出回っているのは,ネットだけじゃない

これは武田邦彦氏の著書『早死にしたくなければ、タバコはやめないほうがいい (竹書房新書)』の帯に書かれてあるグラフと文言です。

禁煙すると肺がんになるという恐ろしいミスリードを展開する武田氏

これは相関と因果関係の区別ができていない典型例です。重要なのは、これが載っているのは素人が書いた個人ブログなどではなく、メディアにも出ている有名な“先生”が著した書籍ということです。

トレーナーが知っておきたい相関関係と因果関係の話 ― 隠れた因子に注意する

2016.03.04

つまり、本に載っていることであっても、さらには著者が大学の先生で、論文や何かのデータを引用しながら語っているとしても、このレベルの情報が混ざっているということです。

そして、このような専門家(自称・専門家の場合もありますが。)の意見というのは、エビデンスのレベルとしては非常に低いです。

エビデンスレベルについては外部サイト「AthleteBody.jp|科学的根拠に基づくフィットネス指導を目指して」の“信頼できるフィットネス情報を普及させる決意”の項目をご参照ください。

情報は,書籍になると格上げされる?

書籍として出版されると、なぜかそこに載っている情報の価値が一段昇格したかのように扱われている印象があります。出版社という第三者の審判をくぐり抜けた情報=より信頼できる情報、ということでしょうか。

■出版社、編集者には存在価値がある、と信じたい
これは人により、意見が分かれると思うのだが、私は大手・中堅くらいのクラスを中心とした出版社から商業出版で出す本と、個人がAmazonで出版社や編集者をつけずに出す電子書籍、言うまでもなく個人のブログなどは別物、別格だと思っている。いや、同じだったら困る。なぜならそこは、出版社が、プロの編集者がついているのだから。

本を「つくる」「売る」という行為において、大きな差がでる、はずだ。一人で書いたものは、一人よがりになってしまう。ちゃんと読者が理解できるもの、響くもの、買ってでも欲しくなるものになっているかどうか、著者だけでは分からない。著者と読者をつなぐ役割、強い商品を作る役割が出版社、編集者にはあると思いたい。

出版業界で食う(3)出版社、編集者には存在価値がある、と信じたい|アゴラ

文体や表現が洗練されることによって、読者に響く“商品”としての価値は高まるかもしれませんが、情報のクオリティも高められるという保証はどこにもありません。ブログの記事も、本に載っている情報も、信頼性という点では、たいしてレベルは変わらないと思った方が良いです。

「個人で出す電子書籍や、個人ブログとは別物」なのは、あくまでも、体裁の面においてだと考えます。個人ブログの内容を、とりまとめて加筆修正して出版されているものもあります。そのような形式で出版された書籍は「読みやすさ」という点ではブログ記事とは別格かもしれませんが、伝えている情報自体はブログ記事とほとんど同じなわけです。

上述の武田氏の著書のように、もっともらしい図表が提示されていたとしても、データの解釈を著者が誤っている(あるいは意図的にミスリードを狙っている)可能性もおおいにあるのです。

「本」にだまされるな

「書籍として出版されているからといって、無差別に信用してはいけない」ということが書いてある記事がありました。

どうも人々は「本」に書いてあることは「本当のこと」と思いこみやすいようですが、まったくでたらめなことが書かれている本や雑誌も多いものです。でたらめとまでは言えないまでも、著者の思いこみ、単なる伝説や噂話をまにうけている本も多いものです。

「本」にだまされるな|江口某の不如意研究室

上記の記事では、デタラメな本の見極めは難しいと認めながらも、いくつかのチェックポイントを示してくれています。

  • タイトルや表紙が煽情的なら注意
  • 出版社に注意
  • 著者の経歴・評判・人間関係にも注意 etc.

「ネットには、いい加減な記事がいっぱい」ということは良く見聞きするのですが、どうも「対 書籍」になると批判的な視点が欠けているという場面に出くわすことは珍しくないように思います。

「本に書いてあるから」「著者が大学の教授・医者だから」「メディアに出ている人が著者だから」という理由だけで、信じてしまわないようにご注意ください。

メディアの信頼度―日本人はインターネットの情報を信じすぎる

2016.12.22

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