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PNFストレッチングが直後のパフォーマンスに与える影響|論文まとめ

PNFストレッチングがパフォーマンスに与える影響

今回はPNFストレッチングが直後のパフォーマンスに与える影響についてまとめます。研究で扱われているPNFストレッチングの形式等については、前回記事で触れていますので以下をご確認ください。

PNFストレッチが柔軟性に与える影響|論文まとめ PNFストレッチングが柔軟性に与える影響|論文まとめ

PNFストレッチングが直後のパフォーマンスに与える影響|~2015年の報告

Behmらが2016年に、ストレッチングがパフォーマンスやROMに与える影響について検討したシステマティックレビューを発表しており、その中で「PNFストレッチングがパフォーマンスに与える影響」についても書かれていますので、その部分を確認しておきます。

  • はじめにこのトピックに関して、14の研究が見つかった。そのうち11がコントラクト-リラックス(CR)を用いたもの、残りの3つがコントラクト-リラックス-アゴニスト-コントラクト(CRAC)を用いた研究であった。CRACの研究は数が限られているため、今回のレビューではCRの研究だけに絞って検討する。
  • 今回のレビューには11の研究から23の測定結果が含まれ、そのうち17はPNFストレッチング直後にパフォーマンスの有意な変化はなし、6つで低下が見られた。PNFストレッチング直後にパフォーマンスが向上したという報告は見当たらなかった
  • 先行研究の多くは有意な変化なしと報告しているが、重み付け平均では4.4%のパフォーマンス低下が示された。つまり、PNFストレッチングを実施することで、直後のパフォーマンスが顕著に低下するわけではないものの、軽度~中程度のネガティブな影響が生じると言える

この内容を読む限りは、PNFストレッチングが直後のパフォーマンスに対してポジティブな影響を与えることは期待できなさそうです。

このレビューには2015年までに発表された論文が含まれていますので、2015年時点での論調は以上のようなものと認識しておいて問題ないと思います。

PNFストレッチングが直後のパフォーマンスに与える影響|2016年~の報告

ここからは、先ほどのレビューには含まれていない2016年以降に発表された論文をチェックしていきます。

レジスタンストレーニングの反復回数への影響

Sáら(2016)は、スタティックストレッチング、PNFストレッチング、特異的ウォームアップ、コントロールの4つの条件がパフォーマンスに与える影響を比較しています。

各グループの内容は以下の通りです。

  • パッシブスタティックストレッチング(PSS):大腿四頭筋とハムストリングスを対象に30秒×3セット
  • PNFストレッチング:大腿四頭筋とハムストリングスを対象に、6秒の等尺性筋活動→24秒のパッシブストレッチング×3セット
  • 特異的ウォームアップ(SW):テスト項目と同じエクササイズを30%8RMの重量で20回
  • コントロール:寝転んで安静(ストレッチング群と姿勢を統一するため)。

それぞれの内容を行ったあと、パフォーマンスの指標として、レッグエクステンション、レッグカール、レッグプレス、ハックスクワットの最大反復回数を測定しました(重量は8RMに設定され、3セット実施)。

その結果、PNFストレッチング群は、スタティックストレッチング群と特異的ウォームアップ群と比較して、すべてのエクササイズ種目の挙上回数で低値を示しました。

PNFストレッチングは反復回数を減少させる

以上の結果から、著者らは下肢のトレーニング前にPNFストレッチングを行うことは避けるべきであると述べています。

こちらの論文は以下の関連記事で個別に紹介しています。

静的・PNFストレッチ・特異的ウォームアップが筋力に与える影響 【論文紹介】静的・PNFストレッチ・特異的ウォームアップが,その後の筋トレの反復回数に与える影響

ジャンプおよびスプリントパフォーマンスへの影響

つぎに、2017年のOliveiraらの報告です。こちらは、アクティブストレッチング(AC)、パッシブストレッチング(PA)、バリスティックストレッチング(BA)、PNFストレッチングをクロスオーバーデザインで比較した初めての研究と言われています。

PNFストレッチングの形式はホールド-リラックスで、予備伸張5秒ー等尺性収縮(65%強度)5秒ー伸張20秒で行われました。それぞれのストレッチングの対象部位は、大腿四頭筋、ハムストリングス、大殿筋、下腿三頭筋でした。

結果は、カウンタームーブメントジャンプにおいて、パッシブストレッチング群とPNF群の有意な減少がみられました。30mスプリントに関しては、すべての群で有意な低下はありませんでした。

カウンタームーブメントジャンプ

30mスプリント

図中の*はPreとPostで有意差があることを示します(p < 0.05)。

柔軟性の指標である長座体前屈はすべてのグループで向上し、各群間で有意差はありませんでした。

Oliveiraらの報告に基づけば、ジャンプパフォーマンスを含む活動の直前にPNFストレッチングやパッシブストレッチングを行わない方が良いということになります。

なお、Alemdaroğluら(2016)によれば、PNFストレッチングによるパフォーマンス低下は15分後には消失したと報告されています(この研究では20mスプリントを測定)。

最大随意収縮への影響

Konradら(2017)は、下腿三頭筋へのPNFストレッチングが、等尺性収縮時の足関節底屈トルクに与える影響を調査しています。

PNFストレッチング群は下腿三頭筋に対するコントラクト-リラックス-アゴニスト-コントラクト(CRAC)を実施しました。CRACの構成は、予備伸張15秒→等尺性筋活動6秒→足関節背屈筋群の収縮を伴う下腿三頭筋の伸張15秒でした。これを4セット実施しています。

その結果、PNFストレッチング群でのみ足関節底屈トルクの低下がみられました(p < 0.05)。

足関節底屈トルク

この結果について、著者らは以下のように述べています。

足関節底屈の最大随意収縮力は、スタティックストレッチングとバリスティックストレッチング群では変化せず、PNFストレッチング群でのみ低下した。

しかし、このトピックに関しては矛盾する結果が存在する。Kayら(2015)はパフォーマンスへの悪影響は無かったと報告しているが、Marekら(2005)はパフォーマンスの低下を報告している。

本研究およびMarekらの研究における最大等尺性収縮トルクの低下は、PNFストレッチング中の収縮および対象筋の疲労により説明できるかもしれない。Kayらはコントラクト-リラックスを用いたが、我々はコントラクト-リラックス-アンタゴニスト-コントラクトを行った。

コントラクト-リラックスは伸張させたポジションで等尺性収縮を行う。コントラクト-リラックス-アンタゴニスト-コントラクトはさらにその後アンタゴニストの収縮を伴う。このことが最大随意収縮に影響を与えた可能性がある。

つまり、CRとCRACでは結果が異なる可能性を主張しています。しかし、2つのテクニックを直接比較した研究が無いと明確な判断はできません。

*この論文内では、contract-relax-antagonist-contract(CRAC)と記述されていましたが、当ブログではCRACはcontract-relax-agonist-contractとして扱っています。

まとめ

今回は、PNFストレッチングが直後のパフォーマンスに与える影響について検討しました。最近の論文に目を通しても、2016年のBehmらのシステマティックレビューの内容を覆すような報告は見当たりませんでした。

そのため、これまでのトレンドが継続すると考えて良さそうです。パフォーマンスに焦点を当てれば、原則的にはウォームアップにPNFストレッチングを採用するメリットは見当たらない、ということになります

先ほど紹介したSáらの報告では、PNFストレッチング後はレジスタンストレーニングの挙上回数が有意に減少していました。長期的な介入を行った研究はありませんので、実際のところは分かりませんが、ウォームアップにPNFストレッチングを行い続けていると、そうでない場合に比べて、筋力向上や筋肥大の程度に遅れが生じる可能性もあります。

以上の理由から個人的には、ウォームアップには特異的な内容を行うことを優先しています。

前回の記事でも取り上げたように、PNFストレッチングのテクニックの多様性の問題により、いくつかの矛盾する報告が散見されます。研究で行われているテクニックと、現場で行われているテクニックに差異がある可能性もあり、その場合はこの記事の内容は、ほんの参考程度にしかなりません。

参考文献

  1. Alemdaroğlu, U, Köklü, Y, and Koz, M. The acute effect of different stretching methods on sprint performance in taekwondo practitioners. J Sports Med Phys Fitness 57: 1104–1110, 2017.
  2. Behm, DG, Blazevich, AJ, Kay, AD, and McHugh, M. Acute effects of muscle stretching on physical performance, range of motion, and injury incidence in healthy active individuals: a systematic review. Appl Physiol Nutr Metab 41: 1–11, 2016.
  3. Konrad, A, Stafilidis, S, and Tilp, M. Effects of acute static, ballistic, and PNF stretching exercise on the muscle and tendon tissue properties. Scand J Med Sci Sports 27: 1070–1080, 2017.
  4. de Paula Oliveira, L, Palucci Vieira, LH, Aquino, R, Vieira Manechini, JP, Pereira Santiago, PR, and Puggina, EF. Acute Effects Of Active, Ballistic, Passive And Proprioceptive Neuromuscular Facilitation Streching On Sprint And Vertical Jump Performance In Trained Young Soccer Players. J Strength Cond Res 1, 2017.
  5. Sá, MA, Matta, TT, Carneiro, SP, Araujo, CO, Novaes, JS, and Oliveira, LF. Acute Effects of Different Methods of Stretching and Specific Warm-ups on Muscle Architecture and Strength Performance. J Strength Cond Res 30: 2324–2329, 2016.
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