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【論文紹介】プラセボ/ノセボが運動パフォーマンスに与える影響

プラセボ/ノセボがパフォーマンスに与える影響をアームクランクエルゴメーターを用いて調査した研究です。

The placebo and nocebo effects on peak minute power during incremental arm crank ergometry

Bottoms L, Buscombe R, Nicholettos A.
Eur J Sport Sci. 2014;14(4):362-7. doi: 10.1080/17461391.2013.822564.
Placebo:プラセボ/プラシーボ。本来、効果のないはずの偽薬を摂取したにも関わらず、好ましい反応が得られる現象。
Nocebo:ノセボ/ノシーボ。プラセボの反対で、偽薬を摂取したにも関わらず、悪影響が出る現象。

被験者(男性、25.3±4.4歳)はパフォーマンステストの30分前に指定のドリンク(500ml)を飲みました。ドリンクの種類によって以下の3つの条件が設定されました。

  • “スポーツパフォーマンス”と書かれたドリンク(プラセボ条件)
  • “疲労促進”と書かれたドリンク(ノセボ条件)
  • 水(コントロール条件)

これらのドリンクはラベルが異なるだけで、成分は全て同じ普通のシュガーフリードリンクです。実験はランダムクロスオーバーデザインで行われました。

パフォーマンスの指標として、アームクランクエルゴメーター実施中のパワー出力、局所的な主観的運動強度が調べられました。

他にも心拍数などの測定項目がありましたが、有意な変化は見られなかったため、省略しています。

結果1:プラセボはパフォーマンスを高める

図7

プラセボドリンク群で、PMP;W(今回の研究でのパワーの指標。Peak Minute Power)の有意な増加が認められました。

図8

さらに、プラセボドリンク群でLRPE(局所的な主観的運動強度。今回の研究ではアームクランクエルゴメーターを行ったので、上肢の主観的運動強度)の有意な低下が認められました。つまり、プラセボはパワーの増加、局所的な疲労感の抑制効果が期待できるということです。

結果2:ノセボは局所的疲労感を高める

ノセボドリンク群では、PMP;Wの有意な低下は見られませんでしたが、LRPEは有意に高い値となりました。つまり、この研究においてはノセボドリンクは客観的な指標に悪影響を与えませんでしたが、主観的疲労感の増大を招いたということです。

現場への応用

この研究結果を現場で活用するとしたら「ワークアウトドリンクの効果は、心の底から信じる。」です。

もちろんドリンクに限らず、(害が無くて)恩恵をもたらしてくれる迷信に関しては、信じてしまうのもアリかも知れません。

 

▼「人生の明暗を分けるものとは?「運がいい人」になるための心理学」『COURRIER JAPON』2016年1月号,p93より

「迷信」を信じる人には強運が舞い込むのか?

毎年お守りを買い替えたり、手のひらに「人」の字を書いたり、といった迷信をバカにする人は多い。しかし、迷信には確実な効果があるのだ。2010年に発表されたドイツの研究では、「あなたが使っているのはラッキーボールです」と言われたゴルファーは、「ほかの人が使用したのと同じボールです」と言われたゴルファーに比べて大幅に良いスコアを出した。つまり、迷信であっても自分は幸運だと信じると、人は持てる能力を普段以上に発揮できると思える。そして、本当に幸運に恵まれたようにパフォーマンスを発揮できるのだ。

参考文献
Bottoms, L., Buscombe, R. & Nicholettos, A. The placebo and nocebo effects on peak minute power during incremental arm crank ergometry. Eur. J. Sport Sci. 14, 362–7 (2014)