【論文紹介】適切なウォームアップ戦略についてのレビュー

適切なウォームアップ戦略についてのシステマティックレビュー

新たにウォームアップ(ポスト・ウォームアップとハーフタイムでのウォームアップも含む)に関するシステマティックレビューが発表されました。その中で、ストレッチングについても少し触れられていましたので、その部分の抜粋と論文全体の結論部分をご紹介します。

Effects of Warm-Up, Post-Warm-Up, and Re-Warm-Up Strategies on Explosive Efforts in Team Sports: A Systematic Review.

Silva LM, Neiva HP, Marques MC, Izquierdo M, Marinho DA.
Sports Med. 2018 Jul 2. doi: 10.1007/s40279-018-0958-5. [Epub ahead of print]

ストレッチングに関する記述

現在、世界中のコーチは一般的にウォームアップの重要な要素としてストレッチング(スタティック、ダイナミック、バリスティック、PNF)を取り入れており、それらはパフォーマンスと関節可動域を改善し、怪我のリスクを減少させると信じている。

しかし、ストレッチングが実質的にそれらの利益をもたらすということを支持する科学的根拠はほとんどない。

先行研究によれば、ウォームアップの終盤でダイナミックストレッチングを実施することで、爆発的なパフォーマンスが数%向上することが示されている。逆に、スタティックストレッチングやPNFストレッチングを行うと筋力、パワー、アジリティの低下を招くため、通常は避けるべきであると示されている。

しかし、最近の研究では、スタティックストレッチング後に動的な動作を行うことで、パフォーマンスにポジティブな影響を与える可能性が報告されている。

ダイナミックストレッチングがパフォーマンスを発揮する直前に実施することが推奨されている一方で、スタティックストレッチングやPNFストレッチングは活動後に実施することがベストであろう。

個人的感想

だいたい以上のような内容でした。ストレッチングがメインの報告ではないので、踏み込んだ内容は無く一般的な記述です。

論文全体としての結論

試合中に繰り返しスプリントを行う必要があるサッカーやバスケットボールやラグビーなどのスポーツは、ウォームアップで爆発的なパフォーマンスの改善を図ることが不可欠である。そのためには、今行っているウォームアップを、より効果的な構成のものに変更する必要があるだろう

ウォームアップに関する大多数の研究は、短時間で集中的に行うウォームアップが好ましいことを示している。一般的にウォームアップは、体温の上昇と競技動作への準備のために、10~15分間で、徐々に強度を漸増させ(50~90%HRmax)、最後は最大強度のスプリント等(~90%HRmax)を用いて、PAP(活動後増強)を狙うべきである。

また、有効なポスト・ウォームアップ戦略を怠った場合、ウォームアップによる利益は、試合開始までの空き時間で失われてしまう可能性がある。ポスト・ウォームアップは、ウォームアップ戦略を考える上で、重要な要素とみなされるべきである。

これまでの研究はポスト・ウォームアップ戦略として、選手はベンチに座ることを避け、立っていることを推奨しているが、競技によってはルール上、それが出来ないこともある。そのような制限に対応するために、ウォームアップ直後に保温性の高いウェアを着用することで、体温を維持する必要性が示されている。

また、空き時間が15分以上に及んだ場合、ゲームに入る直前に爆発的なタスクを含む2分間の再ウォームアップの実施が不可欠である。

ハーフタイムに関しては、体温を維持するために保温性の高いウェアを着用したり、単なる休憩は最小限に留めることが望ましい。そして、ゲーム再開に向けて5~8分程度の能動的な再ウォームアップが重要であると示されている。

これらの知見は、一般的な気候条件(10~30℃)で実施された研究の結果に基づいているため、極端に暑かったり寒かったりする環境下では、異なる結果となる可能性があることに注意が必要である。

*注)保温性の高いウェアは、研究ではブリザードサバイバルジャケット等を着用しています(「ブリザードサバイバルジャケット」で検索すると参考画像が見つかります)。一般的な薄手のウィンドブレーカー等では、同等の効果は期待できない可能性もあります。

チームスポーツに関わっている方などにとって、非常に有益な知見が散りばめられているレビューだと思いますので、参考文献も含めて本文を読まれることをおすすめします。

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