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ファンクショナルカッピングメソッドの効果とエビデンス

ファンクショナルカッピングメソッド

最近は次から次へと、新しいメソッドやツールが出てきています。私は、「どんなものなんだろう?」という純粋な知的好奇心に突き動かされて、新しいものにアタックしています。それら新興メソッドは、口コミなど外に出てくる情報が少ない(+値段も割と高いことが多い)ので、受講に踏み切れない方もいると思います。

そんな方たちの判断材料のひとつになればと思い、今回はファンクショナルカッピングメソッドについてまとめました。私は2017年10月15日にファンクショナルカッピングメソッドのベーシックセミナーに参加しましたが、私自身が修了した立場だからといって、受講を推すワンサイドの記事にしてしまうと、検討中の人の参考にならないので、なるべく中立の立場で書くように心がけました

ここでの新興メソッドという言葉は、単純に「新しく生まれたメソッド」を意味して使っているだけで、ネガティブな評価等の他意は一切含んでいません。誤解があるといけないので、念のため。

ファンクショナルカッピングメソッド

ファンクショナルカッピングメソッドとは?

ファンクショナルカッピングメソッドという名称

私がこの「ファンクショナルカッピングメソッド」を初めて知ったのは、2017年の始め頃だったと思います。

その時の感想は「色々新しいのが出てくるなー。それにしても、なかなかチャレンジングな名前…」という感じでした。

「ファンクショナル」という単語自体に罪は無いと思いますが、メソッドの名称にそれを付けると、一部からは歓迎されないリスクがあります。

さらに「カッピング」という単語を含めれば、従来のカッピングを使用している方たちからの反発も予想されます。これが、私が「チャレンジングな名称だ」と感じた理由です。

その一方で、「ファンクショナル」という単語に関しては、輸入系メソッドのいくつかに「ファンクショナル」が含まれているように、トレンド感を醸し出すには便利な単語とも言えるかもしれません。

また、「カッピング」という単語を含めることで、「吸い上げるツールなんだろうな」というイメージは瞬時に伝わってきます。もし、これが聞き慣れない名称だったら、SNSで流れてきても印象に残らないかもしれません。このあたりは、トレードオフということだと思います。

ファンクショナルカッピングメソッド説明サイト

「押すのではなく吸い上げて癒着をとる」がキャッチコピー

ファンクショナルカッピングメソッドはシリコン製のカップを使って、皮膚を吸い上げるアプローチを行います。これは言葉で説明するよりも、動画で見ていただく方がイメージが掴みやすいと思うので、参考動画を貼っておきます。

通常はローションを使用して、滑らせるようにカップを動かします。動画内でも出てきますが、カップの扱い方によって、それぞれ名称が付けられています。

  1. スタティックカッピング
  2. フラッシュカッピング
  3. ダイナミックカッピング
  4. アドバンストカッピング

ベーシックセミナーでは、上半身に対するそれぞれのやり方を学びます。

シリコンカップですが、吸引力は割と強いです。

ファンクショナルカッピングの跡

ファンクショナルカッピングメソッドの効果

説明サイトには以下の効果が掲載されています。

東洋医学的効果
  1. 血流促進
  2. 血管拡張
  3. 気滞除去
  4. 鎮痛
  5. 内臓機能
  6. 解毒作用
  7. 温熱
西洋医学的効果
  1. 筋膜癒着改善
  2. 可動域向上
  3. 血流促進
  4. 組織代謝亢進
  5. 筋肉痛早期改善

ただし、説明サイトおよび配布テキストには、それらを裏付ける文献は一切付されていません。この点に関しては、のちほど触れたいと思います。

最高顧問には元メジャーリーガーの長谷川氏

さて、運営的な部分に話を移しますと、この「ファンクショナルカッピングメソッド」の運営元である「一般社団法人グローバルアスリートサポート協会」の最高顧問には、元メジャーリーガーの長谷川滋利氏が就いています。

おそらくその関係と考えられますが、野球界への浸透が顕著で、涌井選手や内川選手がファンクショナルカッピングのツールを持っている写真がサイトに掲載されています。

個人的には、誰が最高顧問だとか、プロ選手が使っているだとかはメソッドの信用性・価値に全く含みませんが、治療院などで導入する場合、著名人が賛同しているというのは患者の理解が得やすくなるというメリットはあるかもしれません。仮にどんなに良い物でも、患者の承諾が得られなければ実施することは難しいので、その点では見逃せないポイントかと思います。

セミナー概要

ファンクショナルカッピングメソッドの資格は

  1. ベーシック
  2. アドバンス
  3. プラクティショナル

という3つのランクに分けられています。

私が受講したベーシックコースは、【テキスト・シリコンカップ4サイズ・修了証】で50,000円です。説明サイトによると、ベーシックコースの受講者は半年で200名を越えているようです。

また、今後はセルフケアとして使えるようにシリコンカップの一般販売も開始するとのことです。

ファンクショナルカッピングメソッドのセミナー風景

セミナー風景

ちなみに海外では、数年前からシリコン製のカップは販売されているようです。「Silicone Cupping」で検索すると、類似の商品が複数ヒットしました。

シリコンカッピング

ファンクショナルカッピングメソッドのエビデンス

念のため調べてみましたが現時点(2017年10月)では、ファンクショナルカッピングメソッドを使った学術論文は見当たりません。

そこで、通常のカッピングに関する研究を参考にせざるを得ないことになります。まず基本的なこととして、カッピングには大きく分けて2つの種類があります。

  1. ドライカッピング 専用のカップの空気を吸い出して、吸引する方法(非観血的)
  2. ウェットカッピング 施術部分に小さな傷を付けて吸引することで、積極的に血を吸い出す方法(観血的)

ファンクショナルカッピングメソッドは言うまでもなく非観血的なので、ウェットカッピングの研究を参考にするのは、あまりにも妥当性を欠くことになってしまいます。そこで、ドライカッピングの研究に絞って、検討することにします。

ドライカッピングの研究は少ない…?

しかし、いざ検索してみるとドライカッピングの研究が多くは見つからないことにすぐ気付きました。2012年のレビューによると(1)レビューに含まれた135件のうち57.8%はウェットカッピングを主に扱った研究でした(下図参照)。また、135件中132件は中国語論文であり(3件の学位論文を含む)、英語論文は3件のみでした。

カッピングの種類

強いエビデンスは無い

そのほかのレビューを読んでみても、ウェットとドライが混合で検討されているものや(2)、非観血的であっても、実施方法がファンクショナルカッピングとは大きく異なっているもの(3)など、参考にできなさそうなものばかりでした。

また、質の高い研究が存在しないことや(4,5)プラセボの影響が指摘されており(6)カッピングの使用を推奨しうるだけの十分な科学的知見は、いまのところ蓄積されていない状況と言えます。

そのため、ファンクショナルカッピングメソッドに関しても現時点では学術的な裏付けを提示するのは難しいように思います。

陰圧で組織を引き上げることによって組織間の癒着を取ることができるというのも、イメージとしては理解できるのですが、これが実際に起こっているかは分かりません。これは否定しているわけではなく、単純に「分からない」という意味合いです。

カッピングに関連することとして、皮膚吸引による関節可動域の改善については、国内でメディセルを使用した共同研究が継続的に行われています。しかし、いまのところ学会発表のみですので、「エビデンス」として示せる段階には至っていません

参考

メディセル療法のエビデンスMJ COMPANY

ファンクショナルカッピングメソッドのメリットとデメリット

以上のことを踏まえて、ファンクショナルカッピングメソッドのメリットとデメリットについてまとめたいと思います。なお、あくまでも一個人の意見ですので、ご了承ください。

メリット

  • カップ自体はコンパクトなので、持ち運びがしやすい。
  • シリコン素材は、身体の凹凸に沿わせやすく、骨の上も滑らせることができる。
  • 関節可動域の改善に関しては即効性がある。

デメリット

  • カップ自体はコンパクトだが、マッサージローションやアルコール等を合わせると、それなりの荷物になる パーソナルトレーナーとして、普段少ない荷物で複数店舗を移動している方は、やや面倒に感じるかもしれない。
  • 実施にあたって、脱衣が必要になる部位も多いため、活動先の店舗によっては、カッピングが実施できない(あるいは実施しづらい)状況も考えられる。ただし、上記2点に関しては、治療院やマイクロジム経営の方にとっては、特に問題なし。
  • 数日間は痕が残る。
  • 効果を裏付ける強いエビデンスが存在しない 主観や経験に基づいて行わざるを得ない+変化のメカニズムが客観的に証明されていない。

まとめ

ファンクショナルカッピングメソッドは、関節可動域の拡大という点では、確かに即効性があります。しかし、魔法のメソッドというわけではなくて、あくまでも引き出しの1つです。これはすべてのアプローチに言えることだと思います。「これで万事OK」という方法論はありません。

また、カッピングは陰圧でアプローチするものですが、フォームローラーなどの圧を加える手法を否定するわけでもありません。上手く組み合わせて使うと良いということを運営の方もおっしゃっていました。

新興メソッドの中には、既存の手法を否定したり、このやり方で何でも解決できるかのようなアピールがされていることもありますが、ファンクショナルカッピングメソッドはそのようなスタンスではないという印象を受けました。

個人的には、手技やスキンストレッチ(IASTM)であっても短時間で関節可動域の改善は得られるので、それらで変化がみられないときに使うという感じになるかと思います。

また、個人差があるとは思いますが、スキンストレッチとスライドカッピングを併用することで、より効果を実感しやすいという意見もありますので、このあたりは好みで選択すればよいと思います。

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補足

新興メソッドは、「最新」ということが注目されがちですが、これは(もちろんメリットと捉えられる一方で)裏返せば「(科学的)知見が集積されていない」「時の試練を経ていない」ということにもなります。

新興メソッドを非難しているわけではなく(常に最新の情報をキャッチし続けるのは大切だと思っています)、最初から穴のない完璧なものなど無いので、そのことを承知した上で、自らの検証を加えていく必要があるという態度が大切だと考えています。

参考文献

  1. Cao, H., Li, X. & Liu, J. An Updated Review of the Efficacy of Cupping Therapy. PLoS One 7, e31793 (2012).
  2. Zhang, Y.-J. et al. Cupping therapy versus acupuncture for pain-related conditions: a systematic review of randomized controlled trials and trial sequential analysis. Chin. Med. 12, 21 (2017).
  3. Chi, L.-M. et al. The Effectiveness of Cupping Therapy on Relieving Chronic Neck and Shoulder Pain: A Randomized Controlled Trial. Evid. Based. Complement. Alternat. Med. 2016, 7358918 (2016).
  4. Cao, H. et al. Clinical research evidence of cupping therapy in China: a systematic literature review. BMC Complement. Altern. Med. 10, 70 (2010).
  5. Huang, C.-Y., Choong, M.-Y. & Li, T.-S. Effectiveness of cupping therapy for low back pain: a systematic review. Acupunct. Med. 31, 336–7 (2013).
  6. Lee, M. S., Kim, J.-I. & Ernst, E. Is Cupping an Effective Treatment? An Overview of Systematic Reviews. J. Acupunct. Meridian Stud. 4, 1–4 (2011).