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【論文紹介】フォームローリングとエキセントリックエクササイズが短期および中期的にROMと筋力に与える影響

フォームローリングとエキセントリックエクササイズ

Acute and chronic effects of foam rolling vs eccentric exercise on ROM and force output of the plantar flexors

Aune AAG, Bishop C, Turner AN, Papadopoulos K, Budd S, Richardson M, Maloney SJ.
J Sports Sci. 2018 Jun 12:1-8. doi: 10.1080/02640414.2018.1486000. [Epub ahead of print]

研究背景

スタティックストレッチングは関節可動域(ROM)を増加させる方法として広く用いられているが、直後にパワーや筋力を低下させる可能性があることから、使用する局面が限定されると言える。

そのため、ROMを増加させる手段として、例えばセルフマッサージのような他のアプローチの発見が望まれる。

先行研究において、フォームローリングは即時的にROMを増加させる効果的な手法であると言われており、さらにいくつかの研究は、フォームローリングは直後のパフォーマンスに悪影響を与えないことを報告している1-6

一方で、エキセントリックエクササイズは中長期的にROMを改善することが報告されているが7、実施後にROMがどのように変化するかという短期的(急性)効果については、ほとんど知られていない。

研究目的

そのようなこともあり、今のところフォームローリングとエキセントリックエクササイズが柔軟性に与える影響を直接比較した研究は見当たらない。

そこで、本研究の主な目的なフォームローリングとエキセントリックエクササイズが足関節背屈ROMに与える急性効果と中期的効果を調べることであった。また、足関節底屈ピークトルクと反応筋力指数(Reactive Strength Index: RSI)の変化も検討した。

方法

被験者

ノルウェーのサッカークラブ(1部リーグ)のユースチームに所属する23名の男女。

実験手順

測定日は3日設定され、ベースライン・30分後・24時間後・4週間後の計4回の測定を実施した。

フォームローリングとエキセントリックエクササイズ:プロトコル

フォームローリング

腓腹筋に対するフォームローリングを60秒×3回行った。フォームローリングを行うテンポは規定せず、被験者の自由にさせた。

なお、フォームローリングは利き脚(ボールを蹴る脚と定義)にだけ実施した。実施のタイミングは、毎日のサッカートレーニングの前とした。

エキセントリックエクササイズ

30㎝のボックスを利用したシングルレッグヒールドロップエクササイズ(負荷は自体重のみ)を採用した。15回×3セット実施。利き脚をボックスに乗せ、6秒間かけてストレッチ感が得られるポジションまで下降した。

下降し終えたら、反対の脚で補助をしてスタート位置に戻した。エキセントリックエクササイズも毎日のサッカートレーニングの前に実施した。

測定項目

ROM

足関節背屈可動域はWeight bearing inline lungeで評価した。

足関節底屈トルク

フォースプレートを使用して最大随意等尺性収縮によって評価した。

反応筋力指数(RSI)

シングルレッグドロップジャンプ時のRSIを指標とした。

結果

ベースラインから30分後の急性(短期的)の変化として、フォームローリング群で3.4°(9%; P <0.001、d = 0.54)、エキセントリックエクササイズ群で2.5°(7%; P <0.001、d = 0.47)の改善がみられた。

ベースラインから4週間後の中期的な変化として、フォームローリング群で2.6°(7%)の改善がみられたが、この傾向は有意ではなかった(P = 0.090、d = 0.40)。一方で、エキセントリックエクササイズ群は5.1°(14%)の改善で有意差が認められた(P <0.001; d = 0.96)。

フォームローリングとエキセントリックエクササイズによる短期的変化

足関節背屈ROMの短期的な変化

フォームローリングとエキセントリックエクササイズによる中期的変化

足関節背屈ROMの中期的な変化

 

個人の反応を示した表

各被験者の反応を示した表

考察

本研究の目的は、足関節背屈ROMに対するフォームローリングとエキセントリックエクササイズの効果を比較することであった。結果として、いずれの群も背屈ROMの急性の変化は生じたが、中期的な変化が確認されたのはエキセントリックエクササイズ群だけであった。

他の指標に関しては、いずれの群においても足関節底屈のピークトルクは変化せず、ドロップジャンプRSIは両群とも中期的な変化を示した。

しかし、パフォーマンスの変化は参加者間で一貫しておらず、結果の解釈には慎重を要する。また、本研究でコントロール群が設定されていないことはリミテーションと言える。

結論

フォームローリングとエキセントリックエクササイズは、いずれも足関節背屈ROMを短期的に増加させる可能性が示された。一方で、中期的な介入によっても増加が得られたのはエキセントリックエクササイズだけであった。

そのため指導にあたる専門職は、足関節背屈ROMの改善を必要とする場合、エキセントリックエクササイズを組み込むことでより良い結果を得られるかもしれない。

個人的感想

フォームローリングが中長期的に柔軟性にどのような影響を与えるのかは、個人的にも非常に興味があるところです。この領域の知見が増えてくれば、「柔軟性トレーニングとして何を実施するか」というところの勢力図が変わってくる可能性もあるからです。

今回の報告では、フォームローリングは4週間の介入の結果、ROMを変化させなかったということでしたが、コントロール群が設定されていなかったということや、評価指標の部分でやや曖昧さが残ります。そのため、今回の報告は参考程度に留めたいという印象です。

結果の項目で示した表は、個人の反応を示したものです。論文の方でも指摘されていましたが、positiveとnegative responderが居るということが分かります。このばらつきは特に足関節底屈トルクにおいて顕著に観察されました。

このような結果は、(当然のことながら)統計処理された研究結果を全員に当てはめることは危険で、個人個人の反応も尊重しなければならないということを示しています。

柔軟性の指標について

本研究では、フォームローリングは「腓腹筋に対して実施した」と記述されており、またエキセントリックエクササイズは、いわゆるカーフレイズのエキセントリック局面だけのようなものを行っています(膝は常に伸展位)。

それにも関わらず、足関節背屈可動域の評価には、膝を曲げて行うWeight bearing inline lungeを採用しているのは不自然に思いました。

通常であれば、多用途筋機能評価運動装置(Biodexなど)のパッシブモードを使って、他動的に背屈を行ったときのROMとPassive torqueを測定する方が妥当だと思われます(その上で、Weight bearing inline lungeも実施すればよい)。

足関節底屈のピークトルクの測定もBiodex等を用いずに、フォースプレートを使用してることを考えると、様々な事情により、すべての被験者を研究室に連れてきて測定することが難しかった(もしくは、環境的に機器が揃っていなかった)のだろうと推察されます。

それはそれで仕方のないことなのですが、それぞれの介入の変化を的確に評価できていない可能性があることに加えて、今回の実験結果は「フォームローリングとエキセントリックエクササイズが“Active” ROMに与える影響を調査した」ということになりますので、その点は留意が必要かと思います。

エキセントリックエクササイズについて

今回、行われたエクササイズはシングルレッグヒールドロップエクササイズであり、「6秒間かけてストレッチ感が得られるポジションまで下降」と規定されました。十分なストレッチ局面を含むエクササイズなので、ROMが増加しても何ら不思議ではありません。

また、このROM増加の主要因がストレッチトレランスの変化である可能性も多いにあるので、今回の報告だけでは、そのあたりもクリアではありません。

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実験プロトコルの細かい部分の記述が無く、いまいち状況がつかめない箇所もありました。また、ベースラインから24時間後の変化について全く触れられていません。グラフでは有意な変化が認められたように記されているのですが、本文中に記述がないので読み取れませんでした。

今後、類似の報告が出てくるのを期待したいと思います。

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参考文献

  1. Behara, B., & Jacobson, B. H. (2017). Acute effects of deep tissue foam rolling and dynamic stretching on muscular strength, power, and flexibility in division I LinemenJournal of Strength and Conditioning Research, 31(4), 888892.
  2. Halperin, I.Aboodarda, S. J.Button, D. C.Andersen, L. L., & Behm, D. G. (2014). Roller massage improves range of motion of plantar flexor muscles without subsequent decreases in force parametersThe International Journal of Sports Physical Therapy, 9(1), 92102.
  3. Healey, K. C.Hatfield, D. L.Blanpied, P.Dorfman, L. R., & Riebe, D. (2014). The effects of myofascial release with foam rolling on performanceJournal of Strength and Conditioning Research, 28(1), 6168.
  4. Jones, A.Brown, L. E.Coburn, J. W., & Noffal, G. J. (2015). Effects of foam rolling on vertical jump performanceInternational Journal of Kinesiology & Sports Science, 3(3), 3842.
  5. MacDonald, G. Z.Penney, M. D. H.Mullaley, M. E.Cuconato, A. L.Drake, C. D. J.Behm, D. G., & Button, D. C.(2013). An acute bout of self-myofascial release increases range of motion without a subsequent decrease in muscle activation of forceJournal of Strength and Conditioning Research, 27(3), 812821.
  6. Madoni, S. N.Costa, P. B.Coburn, J. W., & Galpin, A. J. (2018). Effects of foam rolling on range of motion, peak torque, muscle activation, and the hamstrings-to-quadriceps strength ratiosJournal of Strength and Conditioning Research. doi:10.1519/JSC.0000000000002468
  7. O’Sullivan, K.McAuliffe, S., & DeBurca, N. (2012). The effects of eccentric training on lower limb flexibility: A systematic reviewBritish Journal of Sports Medicine, 46(12), 838845.