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【論文紹介】トレーニング後のフォームローリングは疲労回復を促進させるか?

フォームローリング

クールダウンでフォームローリングを行うと、パフォーマンスの回復促進に貢献するという報告です。被験者にプロサッカー選手を採用している点が貴重です。

Effects of Foam Rolling as a Recovery Tool in Professional Soccer Players

Rey, Ezequiel; Padrón-Cabo, Alexis; Costa, Pablo B.; Barcala-Furelos, Roberto
The Journal of Strength & Conditioning Research: August 2019 – Volume 33 – Issue 8 – p 2194–2201

目的

本研究の目的は、クールダウンで行うフォームローリングが、リカバリーを促す手段として有効かを調べることであった。

方法

被験者

スペイン人プロサッカー選手 18名
年齢 26.6 ± 3.7歳

被験者は、フォームローリング群(9名)とコントロール群(9名)にランダムに振り分けられた。

実験手順

実験手順

クールダウン(フォームローリング)の内容

トレーニングセッションが終わってから約3分後にフォームローリングを行った。

ターゲットとした筋群は、サッカーでよく使われる大腿四頭筋・ハムストリングス・内転筋群・臀筋群・腓腹筋であった。両脚に対して各部位45秒×2セット実施した。フォームローリングにかかったトータルの時間は20分間。

コントロール条件はパッシブリカバリーとし、コントロール条件の被験者は20分間ベンチに座るように指示された。

結果

まずは各指標の結果を表で示します。

表

特に気になるものを改めてグラフとして示します。

カウンタームーブメントジャンプに関しては、両条件で有意な低下がみられた。

カウンタームーブメントジャンプ

スプリントに関しては、Pre-Post間・条件間で有意差はみられなかった。(*タイムは値が小さい方が速いため、Postで値がプラスになっているのは、パフォーマンスが下がったことを意味します。)

スプリント

Tテストに関しては、コントロール条件でのみパフォーマンスの低下が認められた。

Tテスト

主観的な疲労感・痛みの結果は、TQRとVASのいずれも、コントロール条件でのみ有意差が認められた。TQRは値が小さい方が、悪い状態を示す。

リカバリー

VASは値が大きい方が、悪い状態を示す。

VAS

考察

今回の研究での主な発見は以下のとおり。

  1. サッカーのトレーニング直後にフォームローリングもしくはパッシブリカバリーの時間を設けても、翌日のカウンタームーブメントジャンプのパフォーマンスにはポジティブな影響を与えない。
  2. サッカーのトレーニング直後のフォームローリングは、アジリティーパフォーマンスと主観的な疲労感・痛みに対するリカバリー手段として、パッシブリカバリーよりも有益である。
  3. 長座体前屈と5m・10mスプリントに関しては、条件間で有意差はみられなかった。

選手の気持ちの重要性を考えると、トレーニング後の主観的な回復レベルを高めることは、計画されたプログラムを遂行することに役立つと考えられる。

なお、フォームローリングを行う最適な強度や時間などについては、今後さらなる研究が必要である。

個人的感想

リカバリーに関する報告でした。ざっくり捉えると、「フォームローリングはリカバリーに良さそう」ということになるのかもしれませんが、いくつか気になる点がありますので、取り上げていきたいと思います。

主観的な回復について

TQRとVASは顕著な効果を示しています。主観的には、回復した感覚が得られているということです。基本的にはポジティブに捉えて良いとは思いますが、気を付けておきたいのは「実際の疲労の度合いを過小評価してしまう可能性もある」ということです。

今回、主観的な指標は、フォームローリングを行うことでPre条件とほぼ同水準を維持しました。つまり、日常生活レベルにおいてはトレーニングによる疲労は残っていないと感じていたということです。(パフォーマンスを発揮する段階になって、前日からの疲労を感じる可能性は十分あります。)

しかし、パフォーマンステストでは、疲労の影響がなかったわけではありません。フォームローリング条件においても、カウンタームーブメントジャンプではPostで記録の低下がみられます。

主観的には十分に回復したと感じている一方で、一部では疲労によるパフォーマンス低下が残っており、主観的なコンディションと実際のコンディションに乖離がある可能性を示唆しています。この主観と実際のギャップが、オーバートレーニングを招く可能性も否定できません。

このギャップの可能性については論文内で考察されていて、「先行研究において筋ダメージの生理学的マーカーとTQRのスコアは逆相関にあるということが報告されており、TQRは疲労からの回復状況を予測する良い指標である。」と述べられています。

しかし、疲労からの回復においては、筋ダメージだけを考えればよいというわけではなく、中枢神経系(CNS)の疲労等も考慮しなければなりません。

他の先行研究においては、TQRとパフォーマンスは強い関連があると報告されているものもありますが、今回の実験・条件においてパフォーマンスの低下が表出しているのは紛れもない事実です。

その一方で、フィットネスクラブで健康の維持・増進を目的にトレーニングをされている方が対象の場合は、TQRのスコアで示される「疲労からの主観的な回復」がもつ意味合いは大きくなります。

翌日に高いパフォーマンスの発揮を求めらるわけではない一般の方にとっては、回復状況の定義は「身体が軽いかどうか」や「日常動作で感じる筋肉痛の程度がどうか」となることが多いからです。

翌日の疲労感が大きいと、トレーニングを継続するモチベーションが削がれてしまう恐れもあるため、その部分へのアプローチという目的意識をもって、クールダウンでフォームローリングを行うのは理にかなっていると思います

コントロール条件について

本研究では、コントロール(パッシブリカバリー)条件は「20分間、ベンチに座って安静」と設定されていました。

個人的には、トレーニングセッション後、20分間ベンチに座っているのは、しんどいのではないかと感じます。

そのため、ベンチに座っている条件と、フォームローリング条件を比較して、フォームローリングの方が良かったとしても、それは「フォームローリングが優れている」ということを強力に後押しするほどのインパクトは無いように思います。

単純にフォームローリング条件の事前評価と事後評価の比較に目を向けて、効果を判断した方が良さそうだと思いました。

実施タイミングにおけるリミテーション

今回の実験では、トレーニングセッションの終了3分後にフォームローリングを実施したと記述してあります。つまり、トレーニング直後にリカバリーのアプローチを行った条件であったということです。

この条件が結果にどれだけの影響を与えるかは定かではありませんが、トレーニングセッションからフォームローリングを行うまでの時間が大きく開いている場合は、効果の表れ方に違いがでるかもしれません

もう少し具体的に言えば、今回は“クールダウン”で実施するフォームローリングのリカバリー効果を報告するものであって、“トレーニング翌日やオフの日”にフォームローリングを行った場合のリカバリー効果を示すものではないということです。

まとめ

いろいろとリミテーションとして書きましたが、主観的な疲労感を軽減するために、クールダウンでフォームローリングを行うことは有益と思われます。ただし主観的なものなので、もし効果が感じられないなら、一つの手段に固執せずに他のアプローチに移行するという考えも大事です。

一方で、対象者がパフォーマンスレベルの回復を必要としている場合や、疲労度の読み違えがオーバートレーニングを招く恐れがあるシチュエーションにおいては、主観的な疲労感の回復と発揮されるパフォーマンスの回復の間には、ギャップがある可能性も考慮しながら指導にあたる必要がありそうです。

これは「リカバリーの手段としてフォームローリングは良くない」と言っているわけではありません。ギャップが存在する可能性を頭に入れた上で実施するのであれば、リカバリーの手段として有効だと思います。

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