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フォームローリング(筋膜リリース)に期待できる効果と期待できない効果

フォームローリング

今回はこちらの記事(DOES FOAM ROLLING WORK?)の要約を紹介します。

フォームローラー(おそらく、国内であればストレッチポールが最も広く知られています)に身体を乗せて転がすことで、一種のマッサージのような効果を得るアプローチは、一般的に「筋膜リリース」と呼ばれています。しかし、筋膜リリースという日本語訳は、このアプローチのメカニズムを正確に表しているかは不明であり、混乱を招く表記であるとの指摘もあります。実際は「ツールを使ったセルフマッサージ」や「ツールを使ったセルフ徒手療法」と言う方が適切であるかもしれませんが、この記事では該当する論文内での表現に従いSelf-myofascial release(SMR)と表記します。

Self-myofascial releaseの効果

SMRのためのツールは様々なものが販売されていますが、ツールの違いによって効果に差が出るかどうかを調べた研究はほとんどありません。そのため、フォームローラーを使うべきか、あるいはマッサージスティックなのか、テニスボールなのか、どれがベストなのかということは分かりません。

ひとつの提案としては、大きな筋群に対しては、サイズの大きなツールを選択する方が効率よくアプローチできるかもしれないということです。反対に、狙いたい部位の表面積が小さかったり、ツールが大きいと当てづらい箇所にはテニスボールなどのツールが最適と言えます。

さて、SMRに関する科学的根拠についてですが、近年のレビュー論文1では、SMRがプレエクササイズやリカバリー戦略に有効かどうかが調査されました。レビューに含められた9つの研究のうち、6つはフォームローラーを使った研究で、3つはマッサージローラーを採用したものでした。

9つの研究はそれぞれSMRの実施時間等のデザインが異なっているので、単純に結果を比較することはできませんが、このレビュー論文では各研究がどのような指標を用いてSMRの効果を評価しているかに焦点を当てて、いくつかの結論を導き出しました。

SMRは関節可動域を改善するか?

筋膜リリースは関節可動域を拡大させる

5つの研究で関節可動域の増加が認められ、1つの研究は変化が無かったと報告しました。関節可動域を増加させた5つの研究は最大で1分間のSMRを行っていました。

SMRは痛みを軽減するか?

レビューに含まれた3つの研究すべてにおいて、SMRは筋肉痛の軽減に有効であることが報告されています。ちなみに、この「軽減」というのは、筋肉痛を予防できるという意味合いではなく、筋肉痛が発生してから、その主観的な痛みを和らげることができるということを意味します。

フォームローラー
【論文紹介】フォームローリングが筋肉痛とパフォーマンスの回復に与える影響

SMRはパフォーマンスを高めるか?

筋膜リリースはパフォーマンスを変化させるか?

2つの研究において、垂直跳び高や最大筋力の増加が報告されていますが、そのほかの研究では変化が無かったとされています。興味深いことは、SMRによってパフォーマンスが変化しなかった場合においても、関節可動域は増加していたということです。

つまり、SMRはパフォーマンスの低下を引き起こさずに関節可動域を広げられるということです。これは実施直後のパフォーマンスを低下させると言われている静的ストレッチングと比較して、SMRがプレエクササイズとして優れている可能性を示しています。

レビュー論文のまとめ

  • プレエクササイズとしてSMRが関節可動域を広げる。
  • 発生した筋肉痛(但し、主観的な痛み)を軽減させる。
  • パフォーマンスを高める可能性は低いが、パフォーマンスを損なう可能性も低い。

 

Cheathamら(2015)のシステマティックレビューにおいても、同様の結論が導き出されています2

フォームローリングは血管を柔らかくする?

非常に限られた報告になりますが、SMRが動脈の硬さと血管内皮機能を改善する可能性も示されています3。その研究では、主要な筋群に各1分間のフォームローリングを行ったところ、直後の血管の硬さの低下とNO(一酸化窒素)濃度の増加が確認されました。

この現象のメカニズムについては、はっきりと分かっていませんが、著者らの見解によると、フォームローラーによる圧刺激が血流の増加を促し血管壁を刺激した結果、血管拡張作用のあるNOの濃度を増加させ、最終的に動脈の硬さの軽減に繋がったのではないかと考えられています。

この研究によって、SMRの血管系への効果の可能性が示されました。今後、さらなる研究によって、この分野の知見が蓄積されることに期待が高まります。

フォームローラーによる筋膜リリースは血管年齢を若返らせるか?
【論文紹介】フォームローラーを使った筋膜リリースは血管を若返らせるか?

まとめ

  • SMRは直後の関節可動域を高めるため、大きな可動域を求める場合にプレエクササイズとして有用である。
  • 筋肉痛を軽減するためのリカバリーツールとしても使える。
  • SMRを継続的に行うことで、血管系の健康に役立つかもしれない(あくまでも可能性)。
  • 即時的にパフォーマンスを高める目的でSMRを使用するべきではない(効果が期待できない)。
  • SMRのためにどの種類のツールを使うかは、現時点では大きな問題ではないと考えられる。状況に応じて使いやすいものを採用すればよい。
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参考文献

  1. Schroeder, A. & Best, T.M., (2015) Is Self Myofascial Release an Effective Preexercise and Recovery Strategy? A Literature Review. Current Sports Medicine Reports, 14(3): 200-8
  2. Cheatham, S.W., Kolber, M.J., Cain, M., & Lee, M. (2015) The effects of self-myofascial release using a foam roll or roller massager on joint range of motion, muscle recovery, and performance: A systematic review. International Journal of Sports Physical Therapy, 10(6): 827-838
  3. Okamoto, T., Masuhara, M., & Ikuta, K. (2014). Acute effects of self-myofascial release using a foam roller on arterial function. Journal of Strength and Conditioning Research, 28(1): 69-73.