Poor trunk flexibility is associated with arterial stiffening
Kenta Yamamoto, Hiroshi Kawano, Yuko Gando, Motoyuki Iemitsu, Haruka Murakami, Kiyoshi Sanada, Michiya Tanimoto, Yumi Ohmori, Mitsuru Higuchi, Izumi Tabata, Motohiko Miyachi
American Journal of Physiology – Heart and Circulatory Physiology Published 1 October 2009 Vol. 297 no. 4, H1314-H1318 DOI: 10.1152/ajpheart.00061.2009
日本の研究グループが2009年に発表した「柔軟性と血管の硬さの関係性」についての論文です。
NHK「ガッテン!(前ためしてガッテン)」では、こちらの研究を基にした内容が放送されたことがありますので、一般の方でも、この事実をご存知の方はいるかもしれません。
研究背景と目的
動脈のスティフネス(硬さ)は動脈の平滑筋や結合組織により決定されます。柔軟性もまた骨格筋や、腱や靭帯などの結合組織によって決定されます。動脈の筋や結合組織の加齢による変化は、全身の加齢による変化と同様であることが報告されています。このことから、柔軟性を欠いた身体は、動脈も硬くなっている可能性が考えられます。そこで、本研究では柔軟性と動脈スティフネスの関係を年齢別に調べることを目的としました。
被験者および実験方法
被験者は526人(男性178名・女性348名)
20~39歳をyoung群、40~59歳をmiddle-aged群、60~83歳をolder群として分類しました。
柔軟性の指標として長座体前屈を、動脈スティフネスの指標としてbaPWVを測定しました。
血管機能検査に関しては「外部リンク/特集:動脈硬化症:診断と治療の進歩 血管機能検査―CAVI,PWV,ABI(pdf)」を参照
結果
middle-aged群とolder群において、柔軟性と動脈スティフネスの間に負の相関関係が認められました(=柔軟性が高まれば、動脈スティフネスは低下)。
リミテーション
他の部位の柔軟性との関連性は明らかではない
本研究は長座体前屈のみの測定のため、他の身体の部位と動脈スティフネスの関係性は、今後の研究課題となります。
月経サイクルによるホルモン変動を考慮できていない
本研究には閉経前の女性が被験者に含まれていますが、今回は月経のサイクルをモニタリングしていません。エストロゲンが増加すると中心動脈スティフネスが低下することを考えると、月経サイクルが結果に影響を及ぼす可能性もあります。
結論
体幹の柔軟性の欠如は、加齢による動脈硬化と関係があることが示されました。この関連性は、心肺持久力や筋力とは独立しています。柔軟性は、動脈硬化を予測する指標として有用である可能性があります。
個人的感想
今回の研究では、柔軟性の指標として長座体前屈が採用されており、それを体幹の柔軟性として表現しています。しかし、先行研究においては「長座体前屈は腰背部よりもハムストリングスの柔軟性を反映している」と報告されています。そのため、「trunk flexibility」という表記にやや違和感はありましたが、この研究の本質は、そこではないと思っているので、どっちでもいい事かもしれません。
最大のポイントは、この研究は横断研究であるため、柔軟性と動脈スティフネスの相関関係を示したに過ぎないということです。二要素間に因果関係が存在するかどうかは、介入による調査が必要になります。
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介入による実験を行った報告も既にあるので、別の機会に紹介します。
柔軟性と血管ステータスの関係については、個人的に注目している分野の1つです。今後の研究報告に期待です。
柔軟性と血管ステータスの関係については、個人的に注目している分野の1つです。今後の研究報告に期待です。
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