はじめに紹介したい記事があります。
先日、BuzzFeed Japan Medicalに投稿された『命に関わる損をさせても「表現の自由」なのか 健康本を巡る出版関係者の思い』という記事です。多大な取材時間と労力がかかったであろう、とても貴重な内容でした。
まだ読まれていない方は、ぜひ目を通してみてください。そして、上記の記事は本当に価値のあるものだと思っているということを前提に、この先は読み進めてもらいたいです。
BuzzFeed Japan Medicalは、9月7日に開設されたBuzzFeed Japanの医療・健康情報の専門アカウントです。
重い病気のときだけでなく、少し体調が悪いとき、怪我をしたとき。多くの人は、インターネットを頼ります。病気の名前を検索すると、治療法や薬に関する記事が山のように出てきます。
その中で、本当に役に立つ情報はどれだけあるでしょうか。
「病気が治る」などと断定的な口調で藁にもすがる人たちを惑わしたり、不正確だったり。健康にとって、逆効果になるような記事すら存在します。
BuzzFeed Japan Medicalを担当するのは、医療を専門とする岩永直子や朽木誠一郎。一線の有識者や医療関係者からの寄稿も交え、「信頼でき、わかりやすく、患者の心に寄り添う記事」を配信していきます。
昨年、DeNAが運営する医療健康情報サイト「WELQ」が不正確な情報や著作権的に問題のある記事、運営体制について批判を浴び、閉鎖されました。
しかし、その後もネット上では医療健康情報をめぐる問題が絶えず、BuzzFeed Japanでも継続的に報道してきました。
正確な情報を伝えると同時に、不正確な情報の検証も続けていきます。」
相当な覚悟の上での開設
昨年のWELQ問題以降、医療・健康関連のWebメディアに向けられる目は厳しくなっている中、このようなアカウントを開設する(しかもインチキ医療の駆逐を標榜して)ということは、相当な覚悟を持ってのことだと思います。
また、担当者の一人である朽木誠一郎さんは、以下のように記載しており、並々ならぬ意気込みが伺えます。
BuzzFeed Japan Medicalは、インターネット上の医療情報の信頼性について、引き続き取材します。気になる医療情報を見つけた方は、Twitter( @amanojerk )またはメール( japan-info@buzzfeed.com )などでご連絡ください。
期待と同時に、限界も垣間見た
「対 インチキ医療・健康情報」を掲げているBuzzFeed Japan Medicalには、期待を寄せています。とくに、冒頭で紹介した記事が良かったからです。
しかし、昨日投稿された『結局、ダイエットにはどのお酒がいいの? 一筋縄ではいかないアルコールと糖質の関係ー「ハイボールはダイエットにいい」を検証する。』を読んで、ある種の“限界”を見たような気がしました。
さっと読んでみて違和感を感じた方もいると思いますが、この記事はダイエットについて書いているにも関わらず「カロリー」という単語が一度も登場しません。
体重の増減を語る上で、カロリー収支は避けて通れないはずです。詳しくは『栄養管理の重要度ピラミッド|AthleteBody.jp』を参照ください。
この記事はどうかなあ…誤解を招きそうな内容だなあと思っていたら、今村先生がTwitter上で指摘されていましたので、わかりやすい順にまとめておきます。
アルコールと糖質には、想像以上に複雑な関係があります。とはいえ、「糖質の多いお酒は控える」ということには、一定の効果が。あと、ビールに利用可能炭水化物が少ないという話にも触れているので、興味のある方はご一読ください。 https://t.co/UgJYS7gmXq
— 朽木誠一郎 (@amanojerk) 2017年9月14日
私はこの記事は確かではないと思います。
①まずこの記事ではアルコール分のカロリーを全く考慮していません。(次のコメント)
②また糖を減らせば痩せるといっていますが、糖でもアルコールでも脂質でも通常より減らせば痩せます。— Fumiaki Imamura (@fumimamu) 2017年9月14日
サントリーハイボール350 mlはAlc 7%・・・171.5 kcal。
同社缶チューハイはAlc 6.3%・・・147 kcalで、この記事の通り1.8 g/100 mlでしたら6.3 g=25.2 kcalでそう総カロリー172.2 kcal。
つまりあまり変わりません。— Fumiaki Imamura (@fumimamu) 2017年9月14日
こんにちは!コメントありがとうございます。カロリー制限と糖質制限、どちらがよりダイエットに効果的か(安全か)というのは議論が続いているところと思います。その上で、なんでも減らせばダイエットになるというのは同意で、今回は糖質にフォーカスしている、という認識でおります。
— 朽木誠一郎 (@amanojerk) 2017年9月14日
こんにちは!・・野暮ですみません。「痩せるため」を考えると、私のコメントの示唆の通りで議論はされてはいない。血糖値などの話に限るとハイボールが良いでしょう(臨床研究もあります)。山田先生は糖尿病の先生で本も書いておいでで常にそっち寄りなのが心配です。生活習慣病は幅広いので・・・。
— Fumiaki Imamura (@fumimamu) 2017年9月14日
とんでもないです!ご懸念、非常に理解できます。今回はインスリン機序の体重増加の防止にフォーカスしており、一方、アルコール自体のカロリーの代謝(さらに量も関係する)はまだ明確な結論が出ていないもの、と理解しております(ご専門の方ですよね、不勉強であれば申し訳ないです)。
— 朽木誠一郎 (@amanojerk) 2017年9月14日
どちらか一方に肩入れするということはメディアの人間としてはするつもりはなく、現在、あれこれ論文を読み込んでいるところです。続報では、三方にしっかりと取材をし、現状の議論がどのようになっているのか、一般読者にもわかりやすい形で紹介できたらと思っています。
— 朽木誠一郎 (@amanojerk) 2017年9月14日
まとめ
今回の一件で感じたことは
- 過去に良い記事を投稿しているからといって、その人の記事がすべて正確とは限らない
- いくら健康分野に詳しいと言っても、やはり現役の専門家ではない以上、情報の精査には限界がある
ということです。この記事を責めるつもりはありませんが、言葉では上手く言い表せないある種の“限界”、そして医療健康関連メディアを運営する難しさを目の当たりにしたようで、複雑な気持ちになりました。