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BALLISTIC STRETCHING INCREASES FLEXIBILITY AND ACUTE VERTICAL JUMP HEIGHT WHEN COMBINED WITH BASKETBALL ACTIVITY.
研究背景
ストレッチはこれまで長きにわたり、怪我の予防やパフォーマンスに有益であると想定されていたため、トレーニング前のウォームアップとして重要な役割を担っているともてはやされてきた。
しかし、ストレッチが怪我を予防するという研究はほとんど存在しない。さらに、最近ではストレッチは直後のパフォーマンスを損なうことが報告されている。一方で、長期的なストレッチの実施がパフォーマンスに与える影響については明らかになっていない。
コーチやアスリートにとって、ウォームアップで行うストレッチがパフォーマンスに与える影響は重要な検討事項である。もし、ストレッチが怪我を予防することができず、さらにパフォーマンスを低下させるのであれば、ウォームアップにストレッチを取り入れることは適切な方策とは言えない。
ストレッチのパフォーマンスに対する急性効果について,相反する報告がみられる
先行研究において、単発のストレッチを行ったあとに、以下の指標が低下することが報告されている。
- 膝関節屈曲と伸展動作の1RM
- 最大随意収縮
- 最大アイソメトリックトルク
- 最大アイソキネティックトルク
- バランス
- リアクションタイム
- ムーブメントタイム
筋力とパワーが低下することを考えると、ストレッチは垂直跳びのパフォーマンスも低下させると考えられるが、相反する報告が存在している。
いくつかの先行研究は静的ストレッチおよびPNFストレッチ後に垂直跳びの値が減少したと報告しているが、他の研究では静的ストレッチまたはバリスティックストレッチ後の垂直跳びに悪影響はなかったと報告しているものもある。
パフォーマンスに対する長期的な影響
長期的なストレッチの実施がパフォーマンスに与える影響についての研究はほとんどない。2つの研究が、ストレッチを定期的に行うことがパフォーマンスを改善しないことを報告している。3週間の股関節および体幹のストレッチを行った結果、ランニングエコノミーは変化しなかった。また、10週間の大腿部および下腿のストレッチを行った研究も変化無しと報告している。
さらに、相関関係について調べた研究では柔軟性とパフォーマンスの関係について様々な結果が混在している。男性のエリートバレーボール選手は股関節の柔軟性が高ければ垂直跳びの値も優れていた(正の相関)が、女性のエリートバレーボール選手は、反対に股関節の柔軟性が高いと垂直跳びの値は低かった(負の相関)。また、サブエリートランナーおよび市民ランナーを対象にした調査で、柔軟性が低いランナーはランニングエコノミーが優れているというデータも存在する。
目的
ウォームアップにストレッチを組み込むというのは広く実践されていることであるため、それのパフォーマンスに対する効果を理解することは必須である。ウォームアップで行うストレッチが垂直跳びパフォーマンスに与える急性および慢性効果はともに明らかではない。さらに、ストレッチングとスポーツの実戦を組み合わせたときの垂直跳びパフォーマンスに対する影響を検討した研究は存在しない。そこで、本研究では以下のことを研究目的とした。
- ウォームアップでのストレッチ実施に続いて、実戦形式の運動を組み合わせたときの垂直跳びおよび柔軟性に与える急性および慢性効果を調査すること。
- 静的ストレッチ、バリスティックストレッチ、スプリントウォームアップ、バスケットボールシューティングウォームアップのいずれか+20分間のバスケットボールの実戦形式が、それぞれの介入6週間の前後で柔軟性と垂直跳びに与える影響を測定すること。
方法
被験者は6週間(週2回)のバスケットボール活動に参加した。
被験者は以下の4つのグループのうちのどれかにランダムに分類された。
- バリスティックストレッチ
- 静的ストレッチ
- スプリント
- コントロール(バスケットボールシューティング)
ウォームアップは8分間行われ、その後20分間のバスケットボールをプレイした。
静的ストレッチ群
4種目で構成され、1種目30秒×2セット実施した。
バリスティックストレッチ群
静的ストレッチと同じ種目を最終可動域で弾みをつけて実施した。弾みのテンポはメトロノームを使用して60bpmに統一した。
スプリント群
バスケットボールコート上で35秒のスプリントを5回実施した。
コントロール群
パートナーとバスケットボールのシュート練習を行った。
結果
6週間後、柔軟性はコントロール群と比較して、すべての介入群で有意に増加した。
6週間前後の測定で、垂直跳びはすべての群において変化していなかった。これは定期的なストレッチが垂直跳びのパフォーマンスに影響を与えないことを示している。
各ウォームアップ直後の測定では、いずれの群においても垂直跳びの変化はみられなかった。これはストレッチが直後の垂直跳びパフォーマンスに影響を与えないことを示していると考えられるが、バリスティックストレッチ群の20分間のバスケットボールプレイ後(Post backetball)においてのみ、垂直跳びの増加がみられた。
考察
バリスティックストレッチはジャンプパフォーマンスを高める可能性
本研究では、競技特異的なウォームアップ、スプリントウォームアップ、2種類の異なるストレッチ(静的 or バリスティック)ウォームアップの柔軟性と垂直跳びに対する効果を検討した。我々の予想では、6週間のストレッチによって垂直跳びのパフォーマンスは低下すると考えていたが、実際は柔軟性エクササイズは垂直跳びに影響を与えなかった。
また、即時的な影響として、ストレッチ直後に垂直跳びが低下すると予想したが、ストレッチを行わなかったグループと比較して差はなかった。先行研究においては、ストレッチが直後の垂直跳びのパフォーマンスに悪影響を与えるという報告と、影響を与えないという相反する報告が存在するが、本研究は後者を支持する結果となった。
ストレッチ直後に単関節運動の筋力が低下したという報告は多く存在するが、そのような個別の筋パフォーマンスの低下が、すなわち全身運動である垂直跳びの直接的な低下を示すわけではない。
ウォームアップ後の20分間のバスケットボール終了時の測定において、当初の仮説では、ウォームアップのストレッチによって引き起こされたパフォーマンスの低下が残存していると考えていた。しかし、前述したとおり、そもそもストレッチを含むウォームアップ後に垂直跳びのパフォーマンス低下は見られなかった。それどころか、バリスティックストレッチ群に関しては2~3cmの増加がみられた。
これは、バスケットボールのウォームアップにバリスティックストレッチを用いると、ジャンプパフォーマンスを高めることができる可能性を示している。
バリスティックストレッチは本当に危険で,避けられるべきテクニックか
本研究においては、バリスティックストレッチは静的ストレッチと同等の柔軟性改善の効果をもたらした。これは多くの先行研究と同様の結果である。中には、バリスティックストレッチは静的ストレッチよりも柔軟性改善の効果が大きかったと報告するものもある。
また、バリスティックストレッチは「怪我のリスクがある」あるいは「筋肉痛を誘発する」という理由から、使用を禁止する文献も複数見られる。しかし、残念ながら、バリスティックストレッチは危険であるという主張には科学的根拠が存在しない。バリスティックストレッチが怪我を引き起こすというエビデンスがないどころか、バリスティックストレッチは筋肉痛を軽減する可能性があることを報告する文献すらある。
現場への応用
ストレッチは長い間、スポーツ活動のウォームアップとして推奨されてきた。その際、ゆっくりと動かし、痛みのない範囲で伸ばし、反動をつけてはいけないと忠告されてきた。ストレッチ中に反動をつけることは、怪我のリスクが高まると考えられているからだ。
しかし、その考えを裏付ける科学的根拠は存在しないし、本研究結果はバリスティックストレッチ(コントロールされた範囲内の最終可動域で反動をつけると定義)は、バスケットボールのウォームアップとして安全で、効果的な方法であることを示している。
バリスティックストレッチは、従来の静的ストレッチと同じように
しかし、
個人的感想
この報告一本だけで、「バリスティックストレッチは優れた方法だから、
この研究はバリスティックストレッチとダイナミックストレッチを
ちなみに、これは2006年の報告で10年以上経過していますので、現在の見解とは異なる可能性があることをご了承ください。