Effects of Static and Dynamic Stretching on the Isokinetic Peak Torques and Electromyographic Activities of the Antagonist Muscles
A Serefoglu, U Sekir, H Gür, B Akova
Journal of Sports Science and Medicine (2017) 16, 6 – 13
研究背景および目的
ここ数年、複数のレビュー論文によって「持続的な静的ストレッチは直後の筋力を低下させる」「動的ストレッチは、直後のパフォーマンスを改善する、あるいは悪影響を与えない」ということが示されている。しかし、それらの研究はストレッチを行った筋のパフォーマンスを調べたものばかりである(例:ハムストリングスのストレッチを行ったあとに、膝関節屈曲の筋力を測定)。
拮抗筋のストレッチが主働筋のパフォーマンスに与える影響を調査した研究は、ほんの少数しかない。さらに、拮抗筋に対する動的ストレッチが主働筋の筋力に与える影響について検討したものはこれまで存在しない。
そこで本研究は、拮抗筋の静的および動的ストレッチの実施が主働筋の筋パフォーマンスに与える影響を調査することを目的とした。
方法
被験者
20人のレクリエーションレベルの運動習慣がある男性
*レクリエーションレベル=週1回、定期的に何らかの運動(ラン、サッカー、バスケットボール、テニス)を行っている
年齢24.8±2.8歳、身長177±6cm、体重72.7±7.8kg
5つの測定条件が設定され、被験者はそれぞれランダムの順番で参加した。
- ストレッチ無し(コントロール)
- 大腿四頭筋の静的ストレッチ
- 大腿四頭筋の動的ストレッチ
- ハムストリングスの静的ストレッチ
- ハムストリングスの動的ストレッチ
静的ストレッチ
各筋に対して、2種類ずつのセルフストレッチを行った。各ストレッチは30秒×4セット実施。
動的ストレッチ
静的ストレッチと同じく、各筋に対し2種類行った。30秒で15レップを1セットとし、4セット実施。
最初のセットはゆっくりと動かし、徐々に素早く、力強く行った。反動はつけないように指示した。
筋力測定
等速性筋力測定装置Cybexを使用して、コンセントリックおよびエキセントリック収縮時のピークトルクを測定した。角速度は60°/sec.と240°/sec.で行った。
EMG
ポータブル筋電計を用いて、大腿二頭筋と半腱様筋、外側広筋と大腿直筋の筋活動を測定した。
結果
筋力に関しては、すべての条件で統計学的有意な差は認められなかった。
筋活動に関しても、すべての条件において統計学的有意な差は認められなかった。
考察・結論
近年、ストレッチのクロスオーバー効果が報告されている一方で、拮抗筋をストレッチした後の同側の主働筋の筋力の変化についての研究は限られている。そこで本研究は、拮抗筋に対して静的ストレッチおよび動的ストレッチをしたあとの主働筋の筋力の変化を調査し、その結果、拮抗筋の静的および動的ストレッチは、主働筋の筋力と筋活動に影響を与えないことを明らかにした。
先行研究は、静的ストレッチを扱ったものばかりであったので、拮抗筋に対する動的ストレッチが主働筋に与える影響について調査したのは、この研究が初めてである。
今後の研究では、PNFストレッチやバリスティックストレッチを用いた場合や、ストレッチのボリュームを変化させた場合の影響についても調査すべきである。また、より活動的な対象者や女性に対する効果も検討されることが望まれる。
個人的感想
拮抗筋のストレッチが主働筋の筋パフォーマンスに与える影響は、ほぼ同じ研究グループから発表された文献ばかりだったこともあり、今回の報告は興味深いです。
先行研究に反して、本研究では拮抗筋のストレッチは主働筋のパフォーマンスに影響を与えないという結果でした。筋力と筋活動の全ての条件で有意な差がなかったということですが、実施したストレッチの写真を見る限りでは、適切なテクニックでストレッチが行われたか、やや疑問に感じるところはあります。変化がなかったという結果には、そのことも関係しているのではないかと思ってしまいます。
ただし、先行研究での報告も、効果量としては小さかったことを考えると、臨床的な有益性という点では、微妙なところと言えるかもしれません。