読書は自己投資だとよく言われます。もし投資をするなら、なるべく大きなリターンを得たいものです。
読書を株式投資に例えるなら、「どの本を買うか」というのは「どの銘柄を買うか」と等しいと言えます。もし株を始めるとして、「適当に目に留まった銘柄を買おう」とは誰も思わないはずです。
だとすると、何の考えも無しに、たまたま目に留まった本を買うというのは、投資というよりギャンブル(と言うと大袈裟かもしれませんが…)の要素が大きくなってしまうことになります。私はギャンブラーではないので、堅実にいきたいです。
わくわく感を大事にしたいという方は、それで全く構わないのですが、「仕事に活かすための読書」 「はずれの本を引いて、お金と時間を無駄にしたくない」という場合は、本の選び方は大切になってきます。
「本なんて、たかだか1500円程度なんだから、いちいち選び方を気にする方が面倒」という考えもあるかもしれませんが、ここはお金の問題よりも、リターンが小さい本を読むのに費やした時間が問題です。
「安いからハズレてもいいや」ではない、ということです。
たとえ参加費が無料のセミナーであっても、実際に参加してみて「何だこれ、参加しなきゃよかった」と後悔するようなセミナーだったら、お金の面では損はしていないかもしれませんが(交通費くらい)、大切な時間を無駄にしているはずなんです。結局、損しているんですよね。
#427 お金だけでなく時間も大切にしたいから、受講するセミナーを決める時は「安いからハズレてもいいや」で決めない|S&Cつれづれ
今回の記事では、大切な時間とお金を有意義に使うために、私が取り入れている本の選び方について書いていきます。
「気になった本」の情報を集める
私の場合、自分の知らない本と接触するのは、ブログやSNSで誰かが紹介していたり、書店にお目当ての本を買いに行ったときに、同じ棚に置いてある本が目に留まるというケースです。タイトルで気になる本があれば、「調べる」という段階に移ります。
1.Amazonのレビューをのぞいてみる
気になる本を見つけたら、Amazonのレビューを確認します。レビューを見るときに心掛けていることは2つです。
(1) 全員一致で高評価のレビューはパス
もし、Amazonのレビューが★5つばかりだったら、一旦レビューを参考にするのは見送ることも多いです。理由は、全員が満点をつけているレビューは信憑性が低いと思っているからです。
実社会の多くの場面において満場一致は起こらないもの。もし完璧な合意があったとすれば、そこにはシステムに影響を及ぼす「隠れた要素」が高い確率で存在します。どんなに調和を求めて努力しても……エラーや不合意が発生するのは自然なこと。「完璧な結論」とはむしろ不自然なものなので、意見の相違が起こりうる場面で満場一致が起こった時は一度疑いの目を向けてみるべきです。
(2) 低評価のレビュー内容を確認する
それなりに売れている本というのは、だいたいの場合、★5つと★4つに評価が集中していて、少数の低評価(★1つや★2つ)が付いているということが多いです。私が主に見るのは、★1つや★2つをつけている人たちの書き込みです。
その中でも、感情ベースや感覚ベースで書かれてあるレビューは無視します。なぜなら、そういったレビューは本の内容云々よりも著者のことが嫌いだったり、自分が信じている言説と反対のことが書いてあったから、半ば嫌がらせで低評価を入れているという場合があるからです。
参考にするのは、理路整然と記述されてある低評価レビューです。つまり「何が理由で低評価を付けたか」が分かるものです。
そして、その「理由」が自分にも当てはまるかどうかを考えます。
たとえば「すでに類書を読み漁った私には、どれもありふれた内容で、この本から学ぶことはありませんでした。色々な本から寄せ集めたような内容です」と書いてあったとします。この場合は読み手の知識レベルが、たまたまマッチしなかっただけで(読者の知識量>本の内容)、本の内容が悪いとは限りません。
もし、自分がその分野の初学者であるなら、上記の低評価は低評価として取り扱わなくてよいということになります。むしろ、「この分野に関する共通するポイントは押さえてある本。入門として要点を把握できる一冊」とポジティブに捉えることもできます。
他の例として、「この書籍は出版から時間が経っており、現在では科学的に否定された内容が書かれてある」という低評価があったとします。本を読む目的が「現時点で活用できる知識・情報を収集すること」であるなら、この低評価は致命的な要素になりえます。その一方で、「学説の変遷について把握したい」という目的があるのであれば、この低評価を気にする必要はありません。
このように、他人の低評価は必ずしも自分にとっての低評価になるわけではないということを念頭におき、いくつか低評価レビューをかいつまんで見ていきます。大きな問題が無さそうなら購入にいたります。
2.書店で中身をチェック
レビューを見ただけでは即決できない場合も往々にしてあります。その場合は、書店で実物を見てみます。確認するのは、主に以下の5つです。
(1) 「はじめに」を読んで惹かれるか
ここは、その本を書いた著者の想いが込められている部分です。そこを読んで全く惹かれなければ、本文も期待薄かもしれません。これは書籍の質に問題があるということではなくて、いま自分が求めているものとマッチしていない、ということです。ここはある程度、直感も大切にします。
トレーナーの弘田さんも同じようなことを書かれていました。
1.途中でやめてもいい、ぴんと来たらすぐに買うこと
本との出会いって一期一会。amazonなどで気になったらすぐに1クリックで購入、というのはお金がいくらあっても足りないですが、ピンと来た場合は金額の多寡に関わらずに購入した方がいいでしょう。積読を恐れないで、買うべき本は確実に手元に置いておくことが重要なんですよね。
2.大型書店にいく機会があれば、とにかく片っ端から興味のある本を開くこと
1のセオリーを100%生かすためにも、大型書店を訪れる機会があったら、とにかく最初の5ページでもいいので実際に本を手に取り、手ごたえをつかむこと。
私も、直感で読みたいと思った本に関しては、すべてのプロセスを飛ばして即購入します。
(2) 目次
目次を眺めれば、だいたいどんなことが書いてあるか想像できます。出版社の意向で『売れるタイトル』に走りすぎた結果、内容とタイトルにギャップがあるということも少なくないので、ここでそのミスマッチのリスクを潰しておきます。
(3) 著者情報
著者の経歴や実績を確認します。ノウハウ系や自己啓発系の本の場合、著者情報はとくに重視します。ただし、肩書だけで信用することは危険なので控えます。
フォロワー数15万人越えのあのトレーナーのフォロワーはフェイク率98%|情報の信用度を表面的な肩書で判断してはいけない理由(4) 出版日
とくに学術的な内容の本は、月日が経つにつれて「正しい情報」が変わることがあるので、いつ出版されたかは重要です。そのほか、デザイン系なども時代によってトレンドが移り変わるので出版日は大事です。
(5) 参考文献があるか
学術的な内容を期待する場合は、参考文献があるかどうかは、とても大切な要素になります。最近、「○○の科学」というタイトルの本が増えましたが、参考文献が付されていないものも多く、がっかりすることが多いです。中にはなんちゃって科学本もあるので、注意が必要です。同じような内容を取り扱っている本が複数あるなら、参考文献が付いているものを選びます。
番外編:他人からおすすめされた本は即買い
他人からおすすめされた本は即買いすることが多いです。匿名のレビューとは違って、面と向かっておすすめするという行為には紹介者側にも、一定の責任感が伴うからです。
セッション中にクライアントから「この前読んだ、こういう本が面白かったよ」という話を聞くことがあります。簡単にあらすじを聞いてみて、自分に少しでも関わりがありそうだと思ったら、その場で「買って読んでみます」と宣言することにしています。「宣言」と言うと大袈裟かもしれませんが、この意思表明は大切だと思っています。
セッションが終われば、何よりも先に紹介してもらった本を注文します。Amazonの1-Click注文なら30秒で注文完了です。「仕事帰りに本屋に寄ろう」ではなく、とにかく最優先で注文します。時間帯が早ければ、その日中に到着するか、遅くても翌日には配達されます。
そして、最も大切なのは、次のセッション時までに、その本を読んでおくことです。簡単な感想と共にお礼を伝えます。この場合の有言不実行は最悪なので、宣言したからには絶対に読むようにします。
まとめ
文章にしてみると、我ながら非常に面倒なプロセスを経て、本の購入に至っているように見えますが、実際慣れてくると、それほど時間がかかるものでもありません。
書店で気になるタイトルの本を見つけたら、「(1)はじめに」~「(5)参考文献」までをぱっと立ち読みで確認、良さそうなら、その場でAmazonで検索→レビューをささっとチェック→購入か判断という流れです。
他の方々がどのようにして本を選んでいるか気になるところではありますが、今回は私なりの方法を紹介しました。参考になれば幸いです。
パーソナルトレーナーの仕事に役立つおすすめ本|専門書からビジネス書まで厳選 トレーナーがチェックしておきたい科学的根拠に基づいたブログおすすめ10選
[…] 「失敗しない」本の選び方|THE STRETCH. パーソナルトレーナー中島健太郎の… […]